上司の部長からねちねちと広島支店への異動について迫られていた時に、同時に転職先の会社の関係者と面談をしていました。この会社ではコンピュータシステムの販売について知識も経験も無く闇雲に人を集めていました。
転職先の会社の部長が面談するというので特に意識するでもなく淡々と面談しましたが、この部長は出世欲の塊みたいな男で、誰でもいいから人を集めて自分の業績を上げようと考えていました。
転職の条件として給与は若干改善され借金はそのまま新しい会社に移せるというので障害がなくなると、最後の壁は40歳過ぎて新しい会社でゼロから仕事を始められるかという心配だけになりました。
しかしながら、工場から営業部門に異動になってから気の小さい部長の下で散々に難しい営業をしてきた経験はこの頃には自信になっていました。体力的にもてば十分に活躍できるだろうと考えました。

ある日の夜に転職先の会社の人事担当者から「採用になりました」という電話があったときには、流石にすこし脂汗が出た記憶があります。自分の意志で人生を決めるという意味で少しドキドキしました。
今の会社で苦労するならば新しい会社で苦労した方が、同じ苦労でも少しは自分のためになるのかと思いました。
普通の人ならば転職はなかなか決断できないと思いますが、なにせ40歳で独身という気軽さもそういう決断を助けたと思います。

職場で「いよいよ転職します」と言い出すと、気の小さい部長は驚いて詮索を始めましたが一切情報は出しませんでしたので、上司の事業部長からは文句を言われていたようでした。この事業部長も体がでかいだけの男で会社には何の役にも立っていないと思いましたが、私が転職先を守秘していることに苛立っているようでした。
気の小さい部長は社員の気持ちを逆なでするように「退職最終日までの3ヶ月は休んでいかん」とか「有給休暇は認めない」とか言い出したので「はいはい」と軽く受け流しました。
自宅では関係者に転職の挨拶状を準備しながら、会社では残務整理をして業務引き継ぎをしましたが、とうてい引き継げるとは思えませんでしたが私は「転職後には再度の業務説明の電話は受付しません」とたんかを切りました。