その一)
山梨に別事業部と取引のあるダイキャスト(アルミニュウム製の骨材製品。当時はVTRとか家電品の内部部品で使用されていました。)を生産する会社があって、或る商社から紹介されました。
ダイキャストを生産する金型設計用に福山のプレス会社のCADを提案しました。この会社の専務さんは事務屋で、取引関係から出来るだけ採用の線で検討するようにとの指示を担当部署にしました。
担当者は現場上がりの技術者で精密さにこだわりがあって、自動車用のような大きな物とは違うという意識があって中々良い評価をしませんでした。1ミクロンに拘るというのが信条の人でした。

その二)
そこで福山のプレス会社で金型を作る現場を見てもらおうというので、会社の見学をしました。プレス会社の専務が懇切丁寧に説明はするのですがいまいち技術者はのってきませんでした。当然夜は接待をしたのですが全く効き目がありませんでした。

その三)
次はダイキャストを生産している京都の会社を見学しようというので計画しました。その時は検討している会社の専務の他、技術者とその上司もきたので5名になりました。その会社の現場を見せてもらうと、金型CADよりも現場の生産の仕方のほうが興味があって、肝心の金型CADシステムの評価は分かりませんでした。
私はこの見学で導入を決めてもらおうとしていましたので、見学後には京都の料亭で接待してこれでもかという程の誠意を尽くしましたが、それでも結論がでませんでした。

その四)
最後は専務さんがわざわざ東京に出向いた時に事務所に立ち寄って「この機能とこの機能の実現を検討してください」と気の小さい課長に依頼したのですが、気の小さい課長はそういう注文をうける気もなく帰り際に記念品の髭剃りを渡すことに頭がいくばかりでした。
最低限の必要な機能の実現を約束できないというので、最後にはこの話しは無くなり他社の製品が導入されたようです。

ここまでくるのに2年ほどもかかり、多大な営業費用を使い徒労に終わった事案でした。
勿論気の小さい課長は無理な依頼を社内の他部署にお願いしなくても済んでほっとした様子でした、こういう上司では部下は浮かばなかったのでした。