その一)
会社は工場という一日中閉鎖された中での仕事でしたので、当然ながらストレスを発散させる必要がありました。
会社が鎌倉という場所にあったので自然と寺巡りというものを始めてると、段々と歴史や文学というものに興味が湧いてきました。高校の頃には勉強で一番嫌いだった古典文学に自然と入っていけました。古戦場、鎌倉時代、遺跡から始まって平安時代、奈良時代、万葉集というような具合にどんどんと深みにはまったわけです。
鎌倉の古道では、静寂さの中に鎌倉時代の血なまぐさい様子を思い巡らして見ると、日常生活のストレスから逃避できるような気がしました。

その二)
会社に入社してから3年目だったと思いますが、仕事にも慣れてきたので休みも安心して取得することができました。会社の友人二人で奈良・飛鳥巡りをしようというので旅行に行きましたが、二人連れは拘束されることもあるので、以後は古寺巡礼を一人でするようになりました。
若い男が古寺巡礼とは如何にも変でしたが、当時はインターネットもなく情報は雑誌や本しかありませんでしたので、古い仏像を見るには旅行で回るしかなかった時代でした。

その三)
室生寺では寺の前の旅館に宿泊しましたが、五右衛門風呂が一つしかなく女性が先で男性は後で入るというものでした。食事の時はおかみさんが団扇で風を送ってくれていたのを思い出します。
奈良駅近くの旅館では、垢だらけの布団カバーの布団に寝て、タオルには「お貸しタオル」と書いてあった旅館でした。
奈良のホテルでは予約してあるのを確認して荷物まで預けたのにも拘わらず、観光後に帰ってくると部屋が無いということで、宴会用大広間で寝かされました。
現在ではこういうことはインターネットの口コミで直ぐに広がって評判になるのですが、当時は情報発信する場もなく、客は馬鹿にされていたのかなと思います。