密約はあったか(1) | 広島から 中国総領事館 誘致に待ったをかける

広島から 中国総領事館 誘致に待ったをかける

広島に県、市、県議会、市議会、経済団体を挙げ、中国総領事館を誘致する計画があります。
経済にばかり走り、国家安全保障を考えない誘致計画に警鐘を鳴らします。

在北京日本大使館の移転許可と引き換えに、裏取引があったのでないかという報道が先月31日にあってから、ネット上を様々な憶測が飛び交っている。

ぼくも憶測してみることにした。
まだどこにも同様の ”憶測” は、発表されていないようだ。
少々長いが、おつきあいいただく。


これまでにあった各社報道をまとめると、だいたい次のような感じ。

1月19日 外務省、中国側に口上書を手交。
1月21日 中国政府 在北京日本大使館移転許可。(1/21は、中国の暦では、日本の大晦日の前日に当たる)
1月24日 J-CASTが、在名古屋中国総領事館が移転方針を断念した模様、と報じる。(中国はすでに春節の休暇に入っている)
1月26日 共同通信中国語版が「中国、在中国日本大使館新館の使用を認可せず」を掲載。中国側は、中国大使館都内一等地買収問題などと取引する切り札として考えている、と報じる。(26日は、中国側にとって、正月仕事始めの日にあたる)
1月27日 ラジオ・フランス・アンテルナテョナル(RFI)中国語版が、東京特派員による記事として「日中外交公館のもめ事、関係改善が空論だと浮き彫りに」を掲載。26日の共同通信の記事は「昨年末の合意を中国側が誠実に履行しなかったことを暴露する日本外務省のリーク」と指摘。
1月29日 KINBRICKS NOW が、26日共同通信中国語版、27日ラジオ・フランス・アンテルナテョナル(RFI)中国語版の記事を論評、24日 J-CAST の記事にも言及。
1月30日 Record China が、29日のKINBRICKS NOWを抜粋転載して報じる。
1月31日 TBS, CBC(TBS系)が夕方、突然、密約を報じる。MSN(産経)jiji(時事通信)は北京発、31日判明分として、すでに中国政府が新大使館の移転許可を出していることを報じた。MSNは同時に「今年は日中国交正常化40周年に当たり、記念事業が始まる前に決着を図ったとみられる。」というコメントを付け加えている。
2月1日 外務省 外交部会で、口上書の存在を公表。また同日外務省は、ホームページ上で2月16日、日中国交正常化40周年 2012「日中国民交流友好年」開幕式を行なうと、発表。
2月1日ごろ 「名城住宅跡地利用を考える会」が外務省担当者が密約を否定、財務省理財局国有財産審理室担当者が「承知していない」との確認を取り、CBCの密約報道は一応誤報と思われるとの見解発表。(この記事は現在削除されている)
2月2日 MNSが未明に口上書の存在を発表。同日の衆院予算委で自民党 小野寺五典議員が質問で取り上げ、玄葉外相が、領事館の土地取得移転とバーターではないと明言。小野寺議員が、二つの文書(中国からの文書による要求と、外務省が出した口上書)の公表を要求。

この件について小野寺五典議員のホームページは、2012年2月2日 (木)の予算委員会を報告し「在北京日本大使館新築問題について外務大臣に質問しましたが明確な答弁はありませんでした。引き続き追求して参ります。」と述べるに留めている。

これ以降、“口上書”のニュースは沈静化するとともに、ネット上では密約があったことを前提に「卑劣すぎる」「日本大使館の使用許可を得るために、密約で協力を約束」などの冷静さを欠いた情報が溢れる。こうしたネットの祭りは論外だ。

それにしても、一連の報道には不可解な点が多い。事実は別のところにあるのではないか?


以下、個人的な見解だが。

今回に限って言えば、外務省は非常に良い対応をしているのではないか?

1/31夕方に突然出たTBS系列報道の“密約”は「中国の策略に乗せられた」というニュアンスで伝えられていた(この密約報道は、現在全て削除されている)。対して、2/2の衆院予算委での玄葉外相の説明は、土地も含め要求があったが、「中国の策略に乗らなかった」、口上書は(領事関係に関する)ウイーン条約と国内法に則ったものである、というものであった。密約を否定したもので明快だった。報道とのコントラストが際立った。外相の説明通りならば問題はない。むしろ、よくやった、という話なのだが、それにしても話がうますぎる。一連の問題は半年に渡って、中国側が外交カードにしてきたものであり、連中のような “ごろつき” が、実質何の意味も含まない口上書1枚で退くわけなかろう。

名城住宅跡地利用を考える会は
在北京日本大使館の移転許可と引き換えに、裏取引があったと報道された件について当会の見解」の中で「報道によれば、口上書は「中国の領事館設置をウィーン条約と国内法に基づいて支援する」という内容です。これは国際的に当たり前のことを述べているだけで、実質的な意味はありません。
と述べ、口上書の内容をを正しく把握していることを示しながら、そのすぐ後でこう断じている。
しかしながら、当たり前の口上書を文書で手交するなどは屈辱外交です。

口上書は「外交文書としては頻繁かつ広く用いられている」(ウィキペディア:今回の件の後、書き変えられたものではない)ものであって、なぜ「当たり前の口上書を文書で手交するなどは屈辱外交」なのか意味不明だ。特別な内容が口上書として手交されていたら、そのときこそ問題なのであって、その逆ではない。跡地利用を考える会の見解は混乱している。

さらに、口上書の手交が屈辱であるかどうかは、費用対効果で考えなければならない。特別な内容を含まないのであれば、日本側は何も犠牲にしていない。それに対し、日本側が何を得ているかを次に見てみることにする。

(2)に続く