本作品は、石油精製所近くの有害物質汚染地域で異常な熱波のために母親を亡くしたソチ(アリエラ・ベアラー)が、大学の環境NGOの活動では今の状況を変えられないと限界を感じ、同じように環境破壊の被害を受けたZ世代の知人やネットを通じて仲間を集め、石油パイプラインの爆破という直接行動に訴えようとする話。アンドレアス・マルム(スウェーデンのルンド大学准教授)原作、ダニエル・ゴールドハーバー監督・脚本・製作による2022年アメリカ映画。

 

本作品をFBIが「テロ」を助長すると警告したそうですが、確かにこの映画に触発されて同じような行動に出る人が出てくるかもしれないと思いました。映画としては脚本がよく練られており、秀作です。原作では、ボストン茶会事件からサフラジェットも公民権運動も反アパルトヘイト運動も、時に暴力的な直接行動があったから成果を上げたということを指摘しているようですが、確かにそうです。掘削業者に居留地を侵されたネイティブ・アメリカン、パイプライン建設のために立ち退きを迫られた者、工場による汚染が原因で急性骨髄性白血病になった者(他にアフリカ系やクィアも)が立ち上がるわけですが、確かに環境破壊が特に弱者にしわ寄せがくるのもその通り。そこで、環境破壊という暴力に鈍感な大企業や富裕層に自覚してもらうために直接行動に立ち上がるのですが(ソチがしていた、「法が裁かないなら我々が裁く」という張り紙をして富裕層のSUVのタイヤをパンクさせる行動は実際に行われているもの)、人を傷つけず、パイプラインを爆破しても環境は破壊しないというルールも課しているのです。

 

映画を見ていて思い出したのは、私自身、高校性の時に、自宅近くの国鉄相模線で厚木基地への米軍のジェット燃料輸送をしていたことが許せなくて、貨物列車の脱線転覆を考えたことがあったこと。ただ、運転士や機関車(DE10)を傷つけてはいけないよねと思い、断念しましたが(笑)。若い頃は時に「過激」なことも考えるものです(誰でもそうとは言えないでしょうが)。それはともかく、このような問題提起的な映画もあるのですね。

 

映画公式サイト

https://howtoblowup.com/