AIトピック@ダボス | コンサルサルのぶろぐ-思考、読書、雑感などを語る

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本日の日経新聞から「ダボス揺らしたAIの衝撃」という記事です。
生成AIに関するコンサルは一つギアが上がってきたように感じます。活用と同時にAIリスク含めアセスおよび対策するコンサルが得意な正に攻めと守りの議論です。
おそらくAIの進化スピードがかなり早まり、いかにキャッチアップして、人がガバナンスするのか、はたまた共生の議論になるのか、追って行く必要があります。







 「中央銀行はなぜ人工知能(AI)の活用を議論しないのだろう」。ダボスで会った起業家ヒマンシュ・グプタ氏は不思議がった。
 公共政策に長く関わり、AIで気候変動を予測する米クライメートAIを創業した。その目には景気は経済の天気と映る。データも過去から直近まで豊富。主観に頼る中銀は時代遅れに思える。
 中銀の及び腰は理解できる。職人技が機械に分かるかとの自負。国民への説明責任も果たしにくい。生成AIが「幻覚」を起こしウソをつく現状ではなおさらだ。
 ただ技術革新は急だ。人の力を代替ではなくオーグメント(拡張)する道具としてAIが市民権を得れば、保守的な中銀ですらAI活用も時間の問題だろう。
 
 AIは社会の隅々に広がる兆しを見せる。「インターネット並みに普及する」「電気のようなインフラになる」「影響は蒸気機関の発明と並ぶ」「ルネサンスだ」「第二の火の発見だ」――。
 1月の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)では、AIと無縁の識者も含め各界の知性が影響と課題を論じ合った。指示通り作業をこなすだけでなく、自ら言葉などを紡ぎ出す生成AIに触れた誰もが、その衝撃を直感している証しといえる。
 実際AIは近未来にどう進化するのか。目安の一つは人間以上の知的作業を理解・学習・実行するAGI(汎用人工知能)。これが「10年内にできる」と言うのは生成AI、チャットGPTを生んだ米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)だ。
 「経営するAI」の到来を見越すのはグーグルが買収したAIスタートアップ、英ディープマインドの共同創設者ムスタファ・スレイマン氏だ。「新商品を企画・製造・発売して稼ぐAIが5~10年以内に誕生する」とみる。
 生活面では、皆がAIの個人秘書をもつだろう、とWEFでAIの政策提言を率いるキャシー・リー氏は予想する。「朝起きると当日の予定は調整済みで、どこに何時に行くか教えてくれる」
 人の存在意義が問われる未来ではある。ドイツの社会心理学者フロムは、資本主義が「社会という機械に自分を進んではめこむような人間」を求め、人を疎外していると述べた。その究極の姿だ。
 リー氏は「人には野心があり、細事から解放された人々はより高い目的に時間を割く」とみるが、皆がそうできるかは疑問も残る。
 
 経済面でも構図は同じだ。AIによる生産性向上や新たな価値創造は経済成長を促すが、企業による人減らしの不安と表裏だ。
 励まされる事例も聞かれた。
 ▼米製薬大手ファイザーは新型コロナウイルスの経口薬開発でAIを活用。数百万の分子化合物の効能を一つずつ試す代わり、有望な600ほどの候補をAIに選ばせ開発時間を大幅に短縮した。
 ▼高級ブランドのグッチでは、修理などの電話応対係がAIを使って販促・営業にも関われる体制を敷き、増収につなげた。
 米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は「新技術による米生産性向上には長く懐疑的だったが、AIの進化で楽観に転じた」と期待を示す。
 他方、国際通貨基金(IMF)は米欧などの先進国では働き手の6割にAIの影響が及び、うち半分は負の影響を受けると分析した。AIで武装した人と、取り残される人の経済格差は広がり「社会的緊張が増す」シナリオをゲオルギエバ専務理事は危惧する。
 こうした社会の亀裂をAIが深め、民主主義の土台を崩すとの不安も強まる。直近ではバイデン米大統領の声をまねたニセ電話が米予備選への不投票を呼びかけた。精巧なニセ動画、ディープフェイクによる扇動も懸念される。
 人類の存亡にかかわる「広島モーメント」を警告する声も上がった。AIが考案した病原体によるバイオテロ、重要インフラへの高精度のサイバー攻撃、AI兵器の軍拡競争……。AIは軍事バランスも左右するだけに、各国の開発を縛るのは容易でないが、不作為が招きうる災厄は甚大だ。
 「広島、長崎の悲劇を受け、核使用を防いできた人類の歩みに学ぶべきだ」と国際政治の権威で米ハーバード大のグレアム・アリソン教授は早期の行動を促す。
 
 安全か技術革新かの論争も熱を帯びる。「感電を防ぐため照明や熱源への電気利用をやめるだろうか」とAI研究の草分けでスタンフォード大のアンドリュー・ン兼任教授は問う。AI自体を規制するのでなく、医療に使うなら医療規制、金融なら金融規制を適用すべきだと米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOらも説く。
 一方、ハーバード大のケネス・ロゴフ教授は米金融規制の緩和が2008年の危機を招いた教訓から「規制は過剰でいい」と、AI業界の軽規制論をけん制する。ただ、ここでも「中国に負けるな」との理屈がまさりかねない。各国が適切な規制を敷くためにも国際的なガバナンス構築が急がれる。
 好機をつかむ策も要る。アラブ首長国連邦(UAE)は英オックスフォード大と組み政府幹部400人にAIを学ばせた。全生徒にAI家庭教師も付ける計画だ。
 やり過ぎ、バブル、との声もあろうが、「AIの技術進化は半導体やインターネットの10倍速」とIBMのアービンド・クリシュナCEOは言う。押し寄せるAI革命の大波はもはや幻覚ではない。翻弄されない備えはあるか。