25年スクリーンで観た映画234「遠い山なみの光」ノーベル賞作家カズオ・イシグロ自身が脚色 | con-satoのブログ

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 日本生まれのカズオ・イシグロ。長崎で生まれて幼少時にイギリスに移住した英国作家。2017年にノーベル文学賞を受賞。そのノーベル賞作家が自ら脚色を担当した映画「遠い山なみの光」。

 

 監督したのは「ある男」で日本アカデミー賞を受賞した石川慶。戦後の長崎の混乱期を舞台に原爆の影響を受けた人びとの不安のようすが二人の女を通じて描かれる。

  

 1950年代の長崎と1980年代のイギリス。ふたつの時代、ふたつの地域で描かれる時空を越えた人生ドラマ。主人公を演じるのは広瀬すずと吉田羊。さらに50年代の謎の女に二階堂ふみ。

 

「遠い山なみの光」★★★★☆

 

 原作は数年前に読んでいる。カズオ・イシグロに関しては90年代には日本で注目の作家としてスポットが当たった。「日の名残り」「わたしを離さないで」も映画化されたので、その印象も強く残っている。

 

 ただし、映画に向いている小説かといえば、概念的な部分は映像には不向き。「日の名残り」はアンソニー・ホプキンスの名演もあり成功したが、それ以外では難しいことは原作者としても承知しているのだろう。

  

 それだけに今回は自身で脚色を担当し、さらにエグゼクティブ・プロデューサーとして映画製作にも積極的に参加した作品。

 

 物語はやはりわかりやすい作品ではない。シリアスなのにファンタジーな展開。「え?」と思う人も多いはず。映画を観ながら、原作には忠実なので、原作を思い出しながら、本ではよくイメージできなかった長崎の風景は、こんなふうなのかと美術の見事さを楽しんだ。

 

 戦後の混乱、原爆の被害にあった街で暮らす人々に与えた影が描かれる。被曝したことを、公にはできない当事者の痛み。その繊細な描写には納得。