昭和に発表された有吉佐和子の「青い壺」。およそ50年前(1976年発表)に書かれた作品が、令和、2025年の今、注目を集めているのは何故かを知りたくて読んでみた。
正直、どうして?と思うほど、普通の小説。有吉佐和子としてもレギュラーなお仕事レベル。とはいえ、有吉佐和子の普通だから、もちろんレベルは高い。
タイトルの「青い壺」は青磁の花器。1話はこの壺を作った作家の話。父親は有名な作家。息子は父の名声に反発を感じながらも父の歩んだ道をゆく。そして、この物語の主人公になる「青い壺」を制作する。その壺を妻が出入りのデパートの美術担当に売ったことで、この青磁の花器の旅が始まる。
舞台になるのは昭和50年代。西暦では1970年代後半。シニアの自分にしてみれば、そんなに昔とは思えない。
この時代、松田聖子はデビューしていないけど、山口百恵は「伊豆の踊子」「潮騒」に主演して「横須賀ストーリー」を歌っていた時代。
しかし、その時代はまだ戦争の影が残っていたことが、この小説には書かれている。あの時はそんな意識はなかったけど、考えてみれば、父も叔父も出征して外地での戦争を体験している。
幼い頃は父や母から戦争の話を聞いたし、グアムからフィリピンから残留兵士が帰って来た時代なのだ。新宿は西口の浄水地から高層ビルが立ち並ぶ時代になっていても戦後はどこかにあった。そんな時代がたくみに描かれている。
「恍惚の人」で記録的なベストセラーを産んだ才人、有吉佐和子。昭和で「才女」と言われれば、一番な名が上がった有吉佐和子。令和での見事な復活。
