山崎豊子の小説「女系家族」。昭和30年代にかろうじて残っていた船場の老舗商家の相続争いを描いた小説。
山崎豊子の船場モノはどれも秀作。この作品も人間の欲深さへの切り込みが深い。一見、えげつない人ばかりなのだけど、読んでいるうちに、欲深いことが、いかにも人間の本性だと納得させられる。
昭和30年代の船場。代々女系の老舗木綿問屋。その当主が亡くなることから始まる遺産騒動。
相続人になった三姉妹の壮絶な争い。昭和30年代でそれぞれ1億円以上の相続なのに1円でも、損するのは嫌だと、競い合う。当時の1億は、今なら最低でも10億、それ以上だろうか?
そこに腹に一物のある老番頭が絡む。3代の主人に60年支えた番頭。この相続争いをさらに煽り、漁夫の利を得ようと画策する。
この小説を読んでいる時に調べたら、小説発刊とほぼ同時に映画化されている。このキャストを見て、曲者の大番頭の「宇吉」を演じていたのが中村鴈治郎だと知った。それからは、小説の中の宇吉に鴈治郎の顔を浮かべて読み進めた。
それにしても、みんながお互いを出し抜こうとする相続劇が最後まではらはらドキドキで、まるでサスペンス小説のよう。登場人物それぞれもピカレスク。山崎豊子の小説の凄みを堪能した。
山崎豊子の船場ものは好きで「暖簾」「花のれん」「ぼんち」から、この「女系家族」まで、ほとんど読んでしまった。今、書店に行けば「山崎豊子」のコーナーには「白い巨塔」「不毛地帯」「大地の子」「華麗なる一族」などが並んでいる。でも個人的に好きなのは、この船場もの。
