イギリス映画「関心領域」の舞台はポーランド。主人公はあのアウシュビッツ収容所の隣に住む家族。となりにあれほど残酷な施設があるとは思えないようなユートピアな世界で楽しく暮らす家族。しかし、夫の配置転換の命令が下されることで家族の運命が動き出す。
「関心領域」★★★★☆
今年のアカデミー賞でも作品賞、監督賞など主要部門でノミネートされた話題作。そして国際映画賞の受賞作品。
他人事には無関心でいる人間の怖さが描かれる。設定はうまい。しかし、観ているうちにあざとさを感じた。登場人物たちを徹底的に客観視する姿勢。これが英国映画だということも大きいと感じた。もし、これが日本の戦争時を韓国の監督が描いたら、どう感じるだろうか。
もし、これがポーランド映画なら、もう少し素直に見れたような気がする。ある意味「A24」というホラーでのしあがったスタジオらしい作品だなと感じた。
作品としての完成度はそれなりに高い。人間が持つ本質的な怖さが描かれている。それでも、それがやや表層的に見えた。その原因は、あまりに主人公たちを突き放しているからのように思える。
もう少し(今的な表現なら)主人公たちに「寄り添った」目線があってもいいのではないかと思う。どうして、あそこまで冷酷になってしまっているのか。それでどうして平静でいられるのか。描かれることが衝撃的なので、ついそちらに目がいってしまうけど、この作者、もしかしたら、このセルフィッシュな主婦と同じ立ち位置に立っていないかとさえ感じたのだ。