これが素顔の三島由紀夫?福島次郎「剣と寒紅」②親族が絶対に認めないこと | con-satoのブログ

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 熊本の高校教師で作家でもあった福島次郎。彼が1998年に発表したのが「三島由紀夫・剣と寒紅」。戦後の昭和20年代に始まった肉体関係を含む三島由紀夫との関係を綴った本。

 三島との男色関係を赤裸々に書いたことで文壇からは非難され、親族からは裁判を起こされた。裁判は文中に使われている三島由紀夫の手紙が「著作権侵害」にあたるとして、この本の発行を禁止した。しかし、初版は10万部もあり、それが今でも流通されている。

 福島は序文で、三島の同性愛的な事柄が親族により、すべて否定されてしまうことや、親族だけでなく文壇においても、三島の性的傾向はヘテロであり、決して同性愛などではないと決めつけられることに、同性愛=忌み嫌うものと扱われていないかとの疑問で、この文章を書いたと書いている。

 三島由紀夫のような有名人のプライバシーがどれほど保護されなければいけないかという問題は複雑だと思う。ある意味、公人なので、プライバシーが語られることも仕方なしという部分もあるだろう。

 有名作家=研究される対象ということになれば、当然、プライバシーへ踏み込むことになる。三島の死後、遺族の意向は、完全に三島のプライバシーへ踏み込むことを拒んでいる。

 ハリウッドで製作されカンヌで上映されたポール・シュレイダー(「タクシー・ドライバー」など)の「MISHIMA」(三島を演じたのは壮年期は緒形拳、青年期は利重剛。その他、加藤治子、沢田研二、佐藤浩一、笠智衆、池部良など豪華キャスト。横尾忠則まで出演している)は親族の意向を汲んで日本では上映されていない。

 三島ほどの作家になれば、評伝の類は数多存在する。もちろん評伝となれば、プライベートな事柄にも及ぶが、決して同性愛的な傾向については述べられることはない。むしろ、意志的に「否定」するという傾向。

 別にプライバシーを暴露しろとは思わないけど、あれほどの作家であれば、プライバシーが存在するものか、それも疑問に思う。

 まして、三島は若い時に「仮面の告白」「禁色」など、同性愛をモチーフにした作品を発表しているのだ。何か何でも、同性愛的な部分はなかったとする圧には疑問を感じる。

▲カンヌでは芸術貢献賞を受賞。美術は石岡瑛子、音楽はフィリップ・グラスとスタッフも一流ぞろい。