やっぱり樹木希林が貴重な人だったと実感する「一切なりゆき」 | con-satoのブログ

con-satoのブログ

映画を中心にエンタメ、旅などを紹介しています。

 樹木希林がなくなって5年。没後はまるで樹木希林ブーム。数多くの本が出版され、どれもベストセラーに。そんな1冊「一切なりゆき」を最近になって読んだ。


 出版当時はブームに無理やり乗せられているようで、敬遠していた。「時間ですよ」をリアルタイムで見たのは小学生の時。ギャク漫画のノリのドラマ。女風呂のシーンではヌードもありで、大人が子供に見せるような「健全」なドラマではなかった。

 子供のとっては禁断の魅力。森光子が女将さんのお風呂屋。その従業員に悠木千帆だった樹木希林。それに堺正章。第1シーズンはそれに西ますみだった。堺正章が憧れる「となりの真里ちゃん」に天地真理。

 第2シーズンに登場したのは「ミヨちゃん」こと浅田美代子。前作で天地真理がトップアイドルになってのに引き続き浅田美代子もデビュー作「赤い風船」が大ヒット。以降、希林とは「寺内貫太郎一家」などで共演する。

 子供の時の樹木希林はドラマで変なことをする人だった。それが晩年は映画俳優になる。若い時は脇役専門だったのに、いつの間にか、主演女優。しかも相当、年をとってから。

 この本によると、若い時は、その時だけのテレビが性に合っていたそうだ。それがビデオやDVDの時代になり、テレビドラマも記録媒体になると、恥ずかしい演技ができないと、映画に意図的に舞台を移したそうだ。

 それで主演が務まるのだから、すごい。やはり、只者ではない。このエッセイで面白かったのは郷ひろみの逸話。松田聖子と破局後、人間不信になった彼。その事務所のマネジャーに頼まれて雑誌の対談を企画。その時、週刊誌が付けたタイトルが「郷ひろみ、聖子との真実を語る」という月並なタイトル。そんなのではダメと「コケにされた男のコケ方」というタイトルを考えて変えさせたそうだ。このセンスが、この人なのだと思った。

 表紙の写真は娘さんと共演した映画「東京タワー」の時のもの。ご本人が気に入っていたそう。あの映画の現場での監督との不仲を考えると複雑な笑顔。これも樹木希林か。