戦前からスター監督だったフランク・キャプラ。ハートウォーミングなコメディ映画の帝王。アカデミー監督賞受賞3回。最初は34年の「或る夜の出来事」。この映画はアカデミー史上2回しかない作品、監督、脚本、主演男女優の主要5部門を独占した名画。それがシリアスな作品ではなく、コメディだということでも、どれほどの傑作かわかる。
そのキャプラのキャリアとしては、やや晩年にあたる1944年の「毒薬と老嬢」を観た。現在開催されている渋谷シネマヴェーラの小林信彦セクションの1本。
この物語、ブロードウェイがオリジナルで日本でも何度も舞台化されている作品。老女二人が住む邸宅の中での出来事を描くので舞台向き。
老嬢が毒薬で連続殺人を起こすドタバタというもの。設定がリアルではないので舞台ならでは物語展開だと思う。
映画の主演はケイリー・グラント。コメディが得意なグラントが出演しなければコメディ映画としては成り立たなかっただろう。
舞台では彼の役は脇役。主役は老嬢ふたり。多分、舞台で観ると、このドタバタぶりが楽しいのだろうなと思って観た。
物事がリアルに写ってしまう映画には向かない素材だなとも感じた。コメディの帝王はやはり王道の映画がふさわしい。