人生で、何度読み返してもいいかなと思う。池波正太郎の映画本 | con-satoのブログ

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 池波正太郎の映画本「池波正太郎のフィルム人生」を読んだ。今まで何回も読み返したこの映画本。読むたびに池波正太郎の映画と人生の含蓄の深さが心に沁みる。


 第1章は「池波正太郎の名画座(フィルムセンター)」と題されて戦前の名作を取り上げている。1本目は成瀬巳喜男の「夜ごとの夢」。

 この作品、今年の正月に早稲田松竹で観た作品だけに、一層、池波正太郎の解説がありがたい。ああ、あのシーンにはこんな意味があったのか

と、観た映画の場面がよみがえる。

 それに、その時代背景もわかる。ヒロインは水商売をしながら子供を育てる女。今ならシングルマザー。池波解説によれば、戦前のこの時代、女の方が働く機会が多かった。その気になれば、女中でも、女給でも女の働き場はある。しかし、男は一度でも、会社勤めから外れてしまえば、なかなか職はなかった。あっても人夫のような肉体労働。

 この映画の夫のように職もなく、女に頼るのは、比較的当たり前だったそうだ。そんな戦前の女の逞しさを描いた映画なのだ、と。

 こういうことは、当時を知るばかりでなく、人や世の中を観察していた池波正太郎ならではの解説。映画を表面だけで見るだけでなく、生活実感から観ている。なるほど、映画は人生を反映するものだなと思う。 

 以降、シュトロハイムから山中貞雄、ジュリアン・デュヴィヴィエまで戦前の名作が、その物語の時代背景、監督のプライベートまで含めて解説する。まさに映画の教科書。映画はこうして自分の人生を反映して観るべきなのだなと、自戒した。