市川中車、團子親子の共演に泣ける思いだったスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」 | con-satoのブログ

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 先代の市川猿之助が企画して始まったスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」。1986年2月初演、38年の月日が流れている。脚本を担当したのは哲学者、評論家として著名な梅原猛。門外界の人に歌舞伎の世界の構築を依頼したと、当時、大変な評判になった。

 美術・朝倉摂、衣装は三宅一生事務所の毛利臣男など斬新なスタッフを揃えて、破格の製作費で作られた舞台。

 その名舞台が現在、新橋演舞場で再演されている。主人公タケルを演じるのは市川團子。タケルの父の帝を演じるのは実父の市川中車(香川照之)。



 詳しい事情は知らないが、元々、この親子共演で企画が進んでいたわけではないだろう。この数年、タケルを演じていたのは現・猿之助。当然、猿之助主演として予定されていたのだと思う。

 それが昨年の不幸な事件により、猿之助が出られなくなった。企画そのものも中止と考えられたこともあったと思う。

 しかし、一門(澤瀉屋)の中から若い團子を抜擢。若干20歳のヤマトタケルが誕生した。初舞台が8歳の時の「ヤマトタケル」のワカタケルだというのから、なんという因縁だろう。

 父親の中車も、歌舞伎界に入ったのは中年になってから。香川照之と中車の二本立てだった。その意味では歌舞伎役者として確立された立場とは言いがたいところにいたと思う。

 この緊急事態になって誕生した20歳のタケルと実父、中車との親子共演。その若きタケルを演じる團子がフレッシュで良かった。もし祖父の猿之助が観ることができたら涙していたのではないか。

 カーテンコールでも親子の握手も麗しい。見事な舞台だった。