山崎豊子の「仮装集団」を読んで映像化するなら、やっぱり田宮二郎だろうと思った。 | con-satoのブログ

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 山崎豊子の長編小説「仮装集団」。初期の頃は船場を舞台にした浪花の商い小説で成功した作家。(吉本せいをモデルにした「花のれん」で直木賞受賞)

 晩年は「不毛地帯」「沈まぬ太陽」など企業を舞台にした長編小説で知られていた。「華麗なる一族」や「白い巨塔」などは何度も繰り返し映像化されている。

 ただし、この「仮装集団」は一度も映像化されていない。多作な人なのに映画、テレビドラマなどで映像化されていない長編は、この作品と遺作になった「約束の海」だけ。

 この「仮装集団」は「勤音」という労働組合をベースにした労働者のためのリクリエーションを提供する組織が舞台。元来は娯楽を提供するだけななのに、会員数が多くなると政治的に利用されるようになる。主人公の流郷は、この組織のプランナー。彼はノンポリ。この組織で働くのはあくまでも彼の音楽的な野心のため。大きな組織を背景に自分の好きな音楽体験をしたい。

 しかし、組織が次第に政治色を強めてという展開。この小説を読みながら、この流郷に田宮二郎を思い浮かべながら読んでいた。

 山崎豊子の映像化作品の代表作「白い巨塔」の映画化作品で主役の財前五郎を演じたのが田宮二郎。元々、大映で役らしい役がついたのは山崎豊子の「女の勲章」。以降「白い巨塔」「女系家族」「華麗なる一族」「不毛地帯」など山崎作品には欠かせない俳優になる。田宮の遺作はテレビドラマ化された「白い巨塔」。

 この「仮装集団」にはモデルらしい人はいなかったそうだけど、もしかして、山崎豊子は田宮をイメージして流郷をかいたのではないかと思うほど、田宮二郎と、このクールな主人公が重なる。

 この小説が映像化されなかった経緯がわからない。「白い巨塔」と「華麗なる一族」に挟まれた作品なので、地味な作品に思われていたのだろうか。物語はコンサートを企画する主人公なので映像化が上手くいけば華やかさのある作品になったのではないかと思った。