浦山桐郎の評伝を読んで思う豊かな日本映画史①今村昌平の凄み | con-satoのブログ

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 映画評論家、田山力哉が書いた「小説・浦山桐郎」を読んだ。昭和の映画評論家の教養は深いなと思わせる力作。浦山桐郎を描きながら、さながら日本映画史になっている。

 昭和37年、吉永小百合主演の「キューポラのある街」で監督デビューした浦山桐郎。田山力哉は浦山桐郎の周辺を描きながら、それが戦後の日本映画界の地図になっている。

 昭和30年代初頭に頂点を極めた日本の映画人口。その当時は小津安二郎、溝口健二、黒澤明、木下惠介など巨匠がスタジオに君臨していた時代。

 浦山桐郎はその次の世代。ほぼ同世代には今村昌平、山田洋次、中原康などがいる。田山力哉のこの評伝小説には、これらの人たちが登場人物とし登場する。

 エピソードとして面白かったのは、浦山桐郎が助監督時代を共にした今村昌平の話。今村は日活に入る前、松竹に入社、小津や木下の助監をしていたそうだ。あの名作「東京物語」にもついていたそうだ。


 映画に詳しい人なら、こんな話は常識なのだろうか。あの巨匠の代表作の助監がカンヌで2度のパルムドールを獲得する今村昌平だとは。なんと贅沢な顔合わせ。

 今村昌平は松竹にいたのでは、いつまで待っても監督になれないと日活に移籍。優秀な助監督を経て監督として成功して行く。

 巨体で鷹揚な性格の今村。小柄で繊細な浦山。対照的な二人なのだけど、浦山は今村に会った時に「この人について行こう」と思ったそうだ。

 同時代に日活にいたので、この二人に交友があっても不思議ではないけど、こんなに親しい関係だったのかと、昭和の名匠、若き日の交流に微笑ましささえ感じた。

今村昌平、2度目のカンヌパルムドール。