24年映画は映画館で25「夜ごとの夢」デビュー間もない巨匠、成瀬巳喜男のフレッシュさ | con-satoのブログ

con-satoのブログ

映画を中心にエンタメ、旅などを紹介しています。

 日本映画の巨匠、成瀬巳喜男の1933年「夜ごとの夢」。成瀬巳喜男は25歳、1930年に監督デビュー。戦前、戦中、戦後、67年の遺作まで日本映画の黄金期を飾った監督。

 「夜ごとの夢」は監督デビュー3年目。28歳の作品。しかし、このひとのキャラなのか、大人の恋愛話になっている。

  主演は当時の大スター、栗島すみ子。彼女が演じるのはカフェの女給。幼い子供を抱えて女給をしているのは亭主に甲斐性がないから。そんな亭主が戻ってくる。

 そこで起こる騒動が描かれる。ファーストシーンからなかなか印象的。横浜の港に渡りの船で着く女。船乗りが彼女を見つけていい寄る。つかさず女は「今晩お店に来てよ」と営業をする。

 彼女の面倒を何かと見てくれるお隣さんの奥さんからは「息子さんのためにも堅気になりなさい」と諭される。でも、経済的には、女でも稼げる女給はやめられない。そんなところへ、亭主が戻ってくる来て「自分が働く」と言い出す。

 結局男は仕事を見つけられずに自殺するという悲劇。昭和5年という社会状況もあるのかもしれないけど、28歳の監督にしては大人の話。

 それにしても上手い。成瀬の映画では山田五十鈴が主演した「流れる」が一番好きだけど、この映画もすでに「流れる」に通じる成瀬ワールドが確立されている。


 サイレント映画なのだけど、まるでセリフが聞こえてくるような、説得力のある映画だった。