沢尻エリカ、舞台で復帰は名作への冒涜なのか?リスペクトなのか? | con-satoのブログ

con-satoのブログ

映画を中心にエンタメ、旅などを紹介しています。

 沢尻エリカが舞台「欲望という名の電車」で復帰とアナウンスされた。以降、賛否の意見がかまびしい。

 テネシー・ウィリアムズの名作。日本では杉村春子の当たり役として長い間知られていた。杉村春子存命中は、他の女優が演じた記憶はない。没後は寺島しのぶ、大竹しのぶ、高畑淳子などが演じた女優にとっては羨望の役。  

 映画化作品では「風と共に去りぬ」のヴィヴィアン・リーが演じて2度目のアカデミー主演女優賞を得ている。

 日本では杉村春子が長らく得意役として演じてたプランチ役。しかし、個人には杉村春子はミスキャストだと思っている。

 映画のヴィヴィアン・リーが、さまさに適役。理由は明快。ブランチは絶対的に美人でないと成り立たない役だから。その点でヴィヴィアン・リー以上のブランチはいない。

 ブランチは、美人で、若い時には多くの男から言い寄られたことが自慢。男は自分にかしずくことが当たり前だと思っている。

 彼女の悲劇は、あまたの男が言い寄って来たのに、好きになってしまったのは、美しいゲイの男だったこと。

 生涯愛した男は、この美しい自分の価値を認めてない人。そこで、彼女は狂って行く。男は全員皆私の虜だと思い込むことによって、平静を保てる。それは、中年になってシワが目立つようになっても変わらない。そのことを義弟の、荒くれ者のスタンリーはあざわらう。妻に「お前の姉ちゃんはイカれてるゼ」と。

 こんな悲劇を描く物語。若い時、誰もが畏怖することほどの美しさを持ったスカーレット=ヴィヴィアン。彼女はその美しさを失うことを表現することに意味がある。 

 なので、杉村春子の役ではないと思った。圧倒的な美人の儚さ、脆さ。いくら演技巧者でも、この主題は表現できない。  

 キャサリン・ペップバーンはブランチを演じなかったと思う。ステラなら演じるだろうけどブランチは私じゃないよ、とペップバーンならいうはず。

 その意味で沢尻エリカは可能性はなくはない。自身の体験も重ねられるかも知れない。愚かな、かつてキレイなだけの女。その美しかったことにすがることしか出来なくて、狂ってしまう悲しい物語。その儚さを表現できるか。

 演出が鄭義信というのは期待できる。でもスタンリーが伊藤英明というのは不安要素を高める。名優マーロン・ブランドの当たり役。沢尻エリカに不安があるなら、ここは鈴木亮平、小栗旬ぐらい安定感のある人をキャスティングしないと、舞台として成り立たないと思う。その意味では、やはり、冒涜?

名優揃いだった映画版。昔、東京駅近くにあった八重洲スター座という名画座で観た。2本立てのもう1本は「市民ケーン」。濃厚な2本立て。