23年映画館愛がとまらない186「さらば、わが愛・覇王別姫」レスリー・チャンの美しさにうっとり | con-satoのブログ

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 1993年カンヌ国際映画祭最高賞「パルムドール」を受賞した中国映画「さらば、わが愛・覇王別姫」。現在公開30周年を記念して4Kリマスター版が劇場公開中。

 監督はチェン・カイコー。同じ中国の巨匠、チャン・イーモウと共に「第5世代」と呼ばれた中国映画のある時期の黄金期を築いた人。その代表作がこの作品。

 主演はレスリー・チャン。彼が演じたのは京劇の女形のスター蝶衣。十八番の狂言は映画のタイトルになっている「覇王別姫」。その相手役の小楼(チャン・フォンイー)に惚れてしまう。弟のように思いながらも恋愛の対象に見られることに戸惑う。しかし、彼は売れっ子女郎の菊仙(コン・リー)と結婚してしまう。菊仙への嫉妬を隠さない蝶衣。その逸脱した愛情をベースに戦前から戦後、四人組時代までの中国の波乱の歴史を背景に描くドラマ。


「さらば、わが愛・覇王別姫」★★★★★

 30年ぶりに劇場で再会。しかし、30年前より遥かに堪能した。「ラスト・エンペラー」と同時代が描かれる。あの映画が皇帝という特別な地位にいた人の歴史であるとすれば、この映画は庶民の歴史。とはいえ、京劇のスターだから、単なる平民ではない。日本の歌舞伎と中国の京劇のスターの違い。それは歌舞伎が名門の一族が芸を引き継いでいるのに、京劇は決して裕福ではない子供たちが芸を磨きスターになっていく。

 この映画の主人公、蝶衣も女郎の母に捨てられた子供。子供の時から稽古場の世界しか知らない特殊な世界で育っている。そんな子供が大人になり、スターになっていく。無垢な舞台人だったのに世間の波に飲まれていく姿はドラマチック。それを演じるレスリー・チャン。まるで蝶衣そのもの。妖しく脆く美しい。彼の嫉妬の対象になる菊仙のコン・リー。彼とは違い現実の世知辛さが骨身にしみた女。それゆえに現実的に生きる。この逞しさをコン・リーが表現する。

 上映時間3時間。たるみなく中国の歴史、京劇の世界を旅した。また10年後にスクリーンで観たい。