三島由紀夫が書いた極道作家・安部譲二の日航パーサー時代「複雑な彼」。 | con-satoのブログ

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 作家・安部譲二は昭和30年代後半に日本航空のパーサーをしていた。当時、彼は暴力団「安藤組」の組員で前科3犯、さらに執行猶予中。

 もちろん、それは隠して応募したそうだけど、今なら考えられない破天荒な話。しかし、家柄も良く、海外経験も豊富で完璧なクィーンズ・イングリッシュを喋れるということで採用になったよう。(その後、客とケンカになり退社) 


 当時、知り合いになった三島由紀夫が彼に興味を持ち、そんなパーサー時代の安部を主人公にしたのが「複雑な彼」。安部は当時、三島が小説を書いているとは知らなかったそうだ。(週刊誌「女性セブン」に連載)

 日航時代の元同僚から「あなたのこと書いてるわよ」と教えられて知ったそうだ。本人は三島の小説の主人公になって「いささか恐縮」な気持ちだったそう。でも、彼の親や組の子分など彼の周囲の人たちは憤っていたそう。本人は平気で笑い飛ばしているというのが、いかにも安部らしい。

 安部は刑務所時代のことを題材にした「塀の中の懲りない人々」でベストセラー作家になった。ケンカも強く頭の良かったという天才だったのだ。

 小説では、言葉だけでなく英国式マナーを身につけた不良ということで女性にモテモテな様子が描かれている。彼に惹かれるお嬢さまの目線で描かれている。文体は軽いけど、女目線で鋭く女心を描いている。三島のクレジットがなければ林真理子の小説のよう。三島の安部への興味、好意を感じる一遍。


 映画化されていて、安倍を演じたのは田宮二郎。