文春文庫の伊集院静「浅草のおんな」を読んだ。男小説のイメージが強い伊集院静がどんな女性を描くのだろうと興味が湧いた。
タイトルの通り舞台は浅草。浅草寺の近所で小料理屋を経営している中年の女。彼女には昔「いい人」がいて、彼が浅草の人だったので、彼に導かれるように浅草で暮らしている。
物語は「いい人」が死んで7回忌を迎える1年の出来事を描いている。
彼女は長崎の出。同じ土地の出の力士に惚れ、親とは勘当され東京に出て来て、彼の面倒を見る。相撲は強いのに気の弱い男。彼女の支えで出世街道を駆け上がる。しかし、位が上がると取り巻きが増え、力士は彼女を捨て、親方の娘と結婚してしまう。
呆然とした彼女は自暴自棄になる。死のうと浅草を彷徨っていたとこれを「いい人」になる男に助けられる。その男は浅草で商売をしている留治。留治には家庭もある。拾われた女、志万は妾の立場で浅草で生きる。
彼女が経営する小料理屋「志万野」で繰り広げられる人間模様が描かれる。この中年のヒロインが魅力的。20年前なら吉永小百合だったろう。
成さない仲の男に拾われ、一度は捨てた人生を健気に生きる。浅草という場所が彼女を育てる。昔は街が人を育てる場所だった。浅草、新宿など、都会の街に集まる人が肩寄せ合って、それぞれの人生を生きる。そんな姿が描かれる。
今やそれは理想郷なのだろう。そんなノスタルジーな物語に浅草は似つかわしい。隅田川の流れのように滔々と流れる人生の物語に少し泣ける。
