中川右介が書いた「松田聖子と中森明菜・1980年代の革命」を読んだ。歌謡曲の専門家ではない著者が醒めた目で80年代の松田聖子と中森明菜を綴る評論本。芸能寄りではなく、社会評価の視点で書かれていたのが新鮮。
実はこの本、著者によれば前編があって、それは70年代の山口百恵を書いたものだそうだ。この本は、その流れということで山口百恵の話から始まる。79年山口百恵は結婚の前年。かねてより噂されていた三浦友和との交際を明らかにする。そして翌年、結婚、引退。
松田聖子はその百恵引退騒ぎの最中の80年春にデビュー。芸能界をポスト百恵探しをするが、一番百恵から遠い松田聖子が、百恵伝説を否定するように一気にスターダムを駆け上がる。
著者は主にタレント本(ほとんどがゴーストであることを認めた上で)からの引用で、当時の当人たちの気持ちを語る。チャートのデータはオリコンより「ザ・ベストテン」が中心。
歌舞伎やクラシックなどパフォーミングアートの著述も多い著者だけど、いわゆる歌謡曲に関するものは少ない。この本と前編にあたるという百恵に関する本ぐらい。
それだけに、聖子&明菜へ記述は客観的というか、かなり上の方から観察している。それはそれで新鮮。ただし、著述対象への愛情は感じられない。それでも客観的だから面白い部分もある。
バブル前夜の80年代前半。日本のショウビジネス界の頂点を極めた二人。ベストテンというおばけ番組の登場で、より一層、アイドル歌謡曲が世間に浸透した時代。聖子と明菜がそれまでの既成観念にアイドルという手法で革命を起こしたというのが、この本の趣旨。革命とは随分オーバーだけど、確かに会社の思惑よりも個人が優先されるようになった。
彼女たちにしてみればレコード会社や所属プロダクションの単なる人形ではなく、生身の人間として虚構のアイドルというロールを演じたということだろう。それによって、世の中のありように何某かの影響を与えた。それが80年代だったというのだ。
