往年の映画女優を主人公にした吉田修一の「ミス・サンシャイン」のリアルさ | con-satoのブログ

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 ベストセラー作家、吉田修一の最新作「ミス・サンシャイン」。主人公は大学院生の男子。担当する教授にいわれで往年の名女優の元を訪れる。彼女が別邸に残している資料の整理が彼の仕事。仕事を進めていくうちに、飾りのない大女優に好かれ、彼は思いもしなかった恋心さえ抱いてしまうという小説。


 主人公は鈴さんと呼ばれる女優。戦後登場して肉体派アプレ女優と呼ばれた人。日本で成功した後、ハリウッドでも成功。アカデミー主演女優賞にもノミネートされた実績を持つ大女優。映画は衰退してからはテレビの時代劇で活躍、その後、商業演劇の世界でも成功を収め、今は引退の身という設定。

 戦後、日本人でハリウッドで成功したのはナンシー梅木。ジャズシンガーとして渡米して、マーロン・ブランドと共演した「サヨナラ」でアカデミー助演女優賞を獲得したアメリカでは一番成功した日本人の一人。その後活動の場をブロードウェイにも広げ「フラワー・ドラム・ソング」ではトニー賞にもノミネートされている。

 現実のナンシー梅木はアメリカ人と2度結婚。アメリカで生涯を閉じた。ナンシー梅木はこの小説のモデルではない。高峰三枝子でも、浅丘ルリ子でもない。もちろん吉永さゆりでもない、想像上の女優。その部分はちょっと作り過ぎな感もある。

 タイトルの「ミス・サンシャイン」はハリウッドの映画会社が彼女につけた愛称。しかし、それには決して表面的な明るさばかりではなく、彼女が長崎で被爆したことの揶揄も含まれているというのが小説の展開。

 それでも戦後の、映画全盛期を生きた女優という話は、映画ファンには面白い。年齢的にはおばあさんでも、そのほのかな色香は大学院生の男の子を惑わすほどというのが女優の魔性を感じる。