木曜日の「市川猿之助」に続き、昨日は「松本幸四郎」のドキュメンタリーをNHKが放映した。
幸四郎「ラ・ママンチャの男」1200回公演の記念番組。
ミュージカルで、一人の俳優が1200回の公演を迎えるのは日本の記録だそう。
劇団四季の「ライオン・キング」など10年以上のロングランを記録しているが、キャストはその日替わり。
1969年から、このドンキホーテ/セルバンテスを演じている幸四郎。たしかに代表作にふさわしい作品。
その記念すべき公演に向かう姿を追った。
僕が幸四郎のミュージカルを観たのは70年代。
帝国劇場で「王様と私」を観た。
アンナ先生は草笛光子。
新鮮で、威厳のあるシャムの国王ぶりに感激した。
その後、観た「ラ・マンチャの男」。
ミュージカルの王道「王様」に比べ、「ラ・マンチャ」は異色の作品だった。
子供心には、少し大人過ぎた。
それでも、「見果てぬ夢」の楽曲の美しさ、壮大さは判った。
アルドンサを演じたのは上月昇。宝塚OGとして東宝ミュージカルを支えた女優。
夢を追うドンキホーテを支える母のような母性に、女としの色香。
上月のアルドンサは、まさにスペインの激しさ、オペラで言えば「カルメン」に通じる情熱の女を的確に表現していた。
染五郎から幸四郎になって、平成になって幸四郎の「ラ・マンチャ」は変わった。
あの女の象徴のようなアルドンサを自分の娘に演じさせた。
18歳の松たか子に演じる事が出来るワケのない、すれた酒場女。
未成年で、実の娘との共演なんて、役者のエゴでしかない。
草葉の陰で菊田一夫は泣いているだろう。
幸四郎の暴走はそれだけに留まらない。
なんと最近は「演出」も手掛けているそうだ。
そして、もう一人の娘の主要キャストに参加させている。
最近はこのミュージカルの演出もしているそうだ。
この日放送された番組は残念ながら、そんな俳優の姿の表面を追うばかり。
そこまで、モンスター化した俳優のエゴには迫らない。
確かに、幸四郎の思い入れは分かる。その、想いに対する誠実さも。
でも、コントロールできなくなった舞台の出来がいいとは思えない。
俳優が舞台に出演しながら、演出するなんて至難の技。
ローレンス・オリビエだって、結局、俳優に軸足を戻した。
幸四郎は韓国俳優チョ・スウンが(日本でも)演じた「ラ・マンチャ」を観たのだろうか?
このカリスマ性のあふれるドンキホーテ。
若い時、数回観た「染五郎」にもあった、同じ質のカリスマ性。
偉大な俳優が、尊大になって、周りも許してしまう。
そんな失敗の軌跡が見えた。