con-satoのブログ

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映画を中心にエンタメ、旅などを紹介しています。

 アイヒマンをはじめナチの残党が南米に逃げたということを基にしている映画「お隣さんはヒトラー?」。

 舞台はコロンビア。主人公は、田舎町に住むマレク・ポルスキーというおじいさん。実は彼はユダヤ人で家族をホロコーストで失い、失意の生活を南米で送っていた。

 そんな彼の隣人が「もしかしたらヒトラーでないか?」と思ったことに始まる悲喜劇。

 実際に南米にナチの残党が逃げ込んでいるので、この仮定はあながち、ないともいえない。

 もし、ヒトラーが逃走して、隣人になっていたらと彼は落ち着かない。それを現地のイスラエルの大使館に訴えるが、ヒトラーは死んでいると相手にされない。


「お隣さんはヒトラー?」★★★★☆

 アイデア映画。国籍はポーランドとイスラエルの映画。理由はよくわかないけど、サウンドが無茶苦茶悪い。その部分は大きな減点。

 でもポルスキーを演じるデビット・ヘイマンはうまい。さすが英国俳優。そして、ヒトラー?を演じるのは英国の怪優ウド・キア(といっても生まれはドイツ)70年代は「サスペリア」や「悪魔のはらわた」などで怪しい男を演じたキア。近年は怪優として、ますます活躍している。今回はヒトラー役。この人なら、もしやと思わせるのがすごい。

 基本的にはおじさん二人だけの物語。これは舞台なら日本でも上演できるかも。セットは真ん中に塀があればいいのだ。その意味では低予算でできる考えられたストーリーなのだ。

 9月に実施される自民党の総裁選と立憲民主党の党首選。自民党は現職の岸田総理は不出馬を表明したことで俄然活気づいた。

 マスコミが出馬候補と伝えるのは10人以上。それぞれが大臣経験者。

 対する立憲民主党は現職、泉健太に対抗するのは枝野だけ。さらに野田元首相の名前まで出る始末。

 マスコミは立憲を「政権交代を狙う」なんて表現するけど、このていたらくで、どこが?と思う。

 だいたい岸田内閣のこれほど不人気なのに立憲の政党支持率は5%前後。自民党は不祥事続きで5%程度下がっていたけど、直近では盛り返して30%弱に。

 5%VS30%じゃ勝負にはならない。どこに政権交代の可能性があるのだろうか?

 それでも有力候補続出の党首選で、これなら将来期待できるかもと思わせてくれるならともかく、この情けない党首選。 

 自民党の総裁選を見ると、さすがだなと思う。決して大物揃いとはいわないけど、それなりの実績のある顔が並ぶ。

 さらに小林鷹之のような若手まで登場。活気がある。

 この状況は決して国民には幸せだとは思わない。これほど自民党のあらが露骨になっているのだから、ここは政権交代があってもいい。しかし、立憲にと思う人は5%なのだ。

 この状況、一番反省すべきは立憲だと思うが、立憲からは、そんな声は聞かれず、自民批判のみ。

 英国のような鮮やかな政権交代を見ると羨ましく思える。それが望めないのは、立憲のせい?他の野党のせい?それとも国民のせい?

 昨日のような抜けるような青空は国政にはない?

 昔は書店に行くと新潮社の「トンボの本」を置いてあるコーナーを見るのが楽しみだった。美術や旅などをテーマにビジュアルが充実した内容。

 旅なども文化的な背景への考察も深くて、単なる旅ガイドとは違う、内容の濃い視点があった。「パリの美術館」などというテーマでも、赤瀬川原平のような曲者が書いているので、事前に読むと、絵画を見る楽しみが倍増した。


 ありふれた言葉で恥ずかしいけど、知的な興奮を感じさせてくれる内容が揃っていた。そんなシリーズの1冊。ベル・エポックのスター画家モディリアーニを1冊まるまる特集した冊子を購入した。

 この原稿にも書かれているけど、モディリアーニには、50年代にフランスの貴公子ジェラール・フィリップが彼を演じた名作「モンパルナスの灯」という名作伝記映画がある。大半の人のモディリアーニのイメージは、この映画に影響されている。自分もそう。しかもヒロイン・ジャンヌをアヌーク・エーメが演じたので彼女のイメージが強い。

 映画が名作なので、本人の実態を超えて、映画のイメージが強く多くの人の頭に残る。モディリアーニの実際の写真を見ると、ジェラール・フィリップよりも(イタリア人ということも含めて)マルチェロ・マストロヤンニの方が本人に近い。

 そんなモディリアーニの生涯から作品の特色まで、こと細かく書かれていた本。どうも日本でモディリアーニ展が開催された時に芸術新潮で特集された内容をまとめたものらしい。

 楽しく読みやい内容で1日で、この画家を知った気分になった。(以前、箱根の彫刻の森美術館に行った時に彼の彫刻があったので、立体もしていたのかと驚いた。実は彫刻は彼の本業の領域だったということを、この本で知った)

 続編が正編を大きく上回るヒットになっているのが「インサイド・ヘッド2」。アメリカでは「アナ雪」を越えるメガヒット。正直「1」はそんなに面白いとは思っていなかったので「2」がアメリカでそこまでヒットしているのは、何故なのだろうかといかぶっていた。しかし、観て納得。成功の理由は主人公ライリーの成長。「1」では幼かったので、感情も複雑ではなかった。彼女が思春期になったことで、感情も複雑になる。そこが物語を立体的に見せることにつながって成功している。練られた脚本の勝利。


「インサイド・ヘッド2」★★★★☆

 監督はこの作品でデビューのケルシー・マン。前作の監督ピート・ドクター(「カールじいさんの空飛ぶ家」「モンスターズインク」「ソウルフル・ワールド」)から引き継いでいる。

 「1」の設定をそのまま引き継ぎでいるけど、その膨らまし方が見事。なるほどなと納得した。

 最近、ピクサーの作品が初期より落ちたなと思っていた。でも、この作品を観ると、まだまだポテンシャルがある!と嬉しくなった。

 ジーナ・ローランズが94歳で亡くなった。年齢を考えれば大往生。ここ数年はアルツハイマーを患っていたそうだ。ジーナといえば、59歳の若さで亡くなった夫、ジョン・カサベテスの存在が大きい。

 この夫婦、ハリウッドではめずらしい知性を感じさせる素敵なカップルだった。カサベテスは俳優としては名脇役という立場だったけど、高く評価されたのは監督業。アメリカ独立映画界の雄だった。

 ジーナがアカデミー主演女優賞候補になった「こわれゆく女」「グロリア」はどちらもカサベテスの監督作品。独立系の低予算映画で作家性を発揮していたカサベテス。

 その中で一番ヒットした「グロリア」だけはメジャー映画の作品。これがジーナの圧倒的な代表作になった。


 子供嫌いな女が、ひょんなことから子供を預かることになる。そして、組織に狙われて逃走する物語。ジーナがタバコを咥え、子供の手を引き逃げる。その姿がカッコよかった。まさにハンサムウーマン。幼い子供に「ガキなんて嫌いだよ」とうそぶく女。それが二人で逃げるうちに心が通うようになるハードボイルド。

 89年にカサベテスは59歳で亡くなる。しかし、彼の監督作品への評価は高まるばかり。アメリカの独立系映画の基礎を作った作家。多くの映画監督たちにも影響を与えている。

 「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督。東大の卒論のテーマはカサベテスだったそうだ。そのカサベテス映画のミューズであり続けたジーナ。息子のニックも監督になり「君に読む物語」では母を俳優として起用した。コッポラ一家ほど派手ではないけど、映画ファミリーとして偉大な功績を残しているカサベテス・ファミリー。

 監督の夫を支える主演女優。日本なら伊丹十三&宮本信子だろうか。その夫の手腕で、妻は女優として飛躍する。映画界の理想的な夫婦像。

 眞栄田郷敦が主演した「ブルーピリオド」。彼が演じているのは、無為な日々を送る高校生。友人と離れるのが怖くて、オールして、朝、渋谷でラーメンを食べるような生活を送っている。しかし、人に合わせるだけの生き方に少しだけ、疑問に思っている。ある日、美術室で先輩女子高生の絵に出会い、絵画の世界に惚れ込む。そして、彼は芸大を目指す。


「ブルーピリオド」★★★★★

 眞栄田郷敦がひたすら熱い高校生を演じる。彼の目力の凄さが生きる役柄。困難な芸大を目指す熱気が画面から伝わる。しかし、そのことが簡単に成せることではないことも描かれる。そこが良かった。

 家庭の事情も複雑。父(「ずん」のやすの存在感の薄さが笑える)はかつては会社の経営者。しかし、今は清掃員。給料の高い深夜勤務。母(朝ドラ「ひらり」のヒロインから年月を感じる石田ひかり)からは貧乏だから、私立にはやれない、勉学に励み、国公立を目指せと言われている。


 その母には内緒で、美術専門予備校に通う。そこで指導するのは個性的な先生(またまた!江口のり子!が好演)。そこには誰もが認める天才的な青年(板垣李光人)がいる。さらに学校には、彼に絵画への興味を持たせるきっかけになった女装の同級生(高橋文哉)などもいて、芸大を目指す。

 渋谷や新宿など見慣れた風景が物語の中で、見事に背景になっている。渋谷のラーメン屋、新宿の世界堂などのロケーションの使い方が見事。そしてテンポのいい疾走感のある編集。悩める青春や、それを見つめる大人たちの姿も丁寧に描かれている。芸大を現役で目指すというのは結構、突飛な話なのに、リアリティがある。嘘くささがないのだ。


 ブラッド・ピットとジョージ・クルーニーが久しぶりに共演する映画「ウルフズ」(なんで複数形にするなら「ウルブズ」じゃないのだろう?)の劇場公開が突然中止になった。


 これは劇場公開→配信というパターンをAmazonスタジオが急遽見直したことに由来するらしい。それはこの夏公開したスカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム共演の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」がコケたことにAmazonが不満だったからだそうだ。


 映画自体は久しぶりにハリウッドの王道を感じさせる良作だった。アニメやコミックに席巻されている今のアメリカの映画マーケットでは、このような正統派な映画が公開されても、観客がついてこれない現状がある。

 アニメはともかく、コミック・ヒーロー映画の乱発で観客は、あれが映画だと育ってしまっている。大人向けの良心作なんて、マーケットでは厳しい。(ワーナー&ユニバーサル&アンブリン共作の「ツイスターズ」はそれなりに大ヒットしているけど「インサイドヘッド2」や「デッドプール&ウルバリン」の1/3程度の売り上げ。日本では大コケしていて、2週目でTOP10から消えている)

 以降Amazonは劇場公開は見直して配信優先になるそうだ。これはコロナの時、ディズニーは配信優先に切り替えて戦略を失敗した時に重なるように見える。当時はNetflixに対抗する「Disney+」を盛り上げるために、配信を露骨に優先した。

 結果的にアカデミー賞に輝いた「ソウルフル・ワールド」も劇場で予告を流しながら、公開を見送った。(今年になった劇場公開)しかし、思うほどは配信契約者は伸びず、さらに映画館からの売上もなくなった。

 今はそれを撤回。「インサイド・ヘッド」は全米市場だけで6億ドルを超える収益。「デッドプール」もR指定にもかかわらず既に5億ドルを突破してディズニーはこの夏の覇者になっている。

 もともと映画会社だったディズニーと配信からスタートしたNetflixやアマゾンでは企業体質が違っているのかもしれない。一時はアカデミー賞の主要部門を制したNetflixも劇場用の映画では曲がり角。

 これから従来のスタジオが復活して王道のアメリカ映画を作れるのか。配信に飲まれていくのか。歴史を遡ればテレビが登場した時に映画界は揺れた。しかし、70年代以降、コッポラ、ルーカス、スピルバークの出現で復活した。映画会社の製作ノウハウは簡単に消えるものではないと思うし、その基本は映画館にあると思う。(あって欲しい)

 コミック→テレビアニメ→劇場版のルートをたどって公開された「劇場版モノノ怪・唐傘」。コミックもテレビアニメも知らなかったけど、なかなかの評判だったので、劇場へ。

 江戸時代の大奥が舞台。そこにもののけが現れという展開。ここに登場する薬売りが、この物語の主人公らしいのだが、映画版では脇役。


「劇場版モノノ怪・唐草」★★★☆☆

 テレビアニメが評判だったらしいが、まったく見ていないので、この作品の世界観がいまいち理解不足。

 和風ながら、極彩色の画面は絢爛豪華という言葉がふさわしい。それを楽しんだ。

 ただし、物語の展開はいまいち。大筋は大奥に取り憑いたモノノ怪を、この薬やさんが取り除くという話。でも、装飾が多くて、物語の筋立てがスッキリしない。

 ここはシンプルに新人さんの奮闘記で見せれば、わかりやすく、あの美しい画面を楽しめるのに。

 そう感じるのは、こちらが基礎知識不足だからか。ネット時代になって、キャラに、やたらとこだわった映画(特にコミック→アニメ→映画版の場合)が多い。

 ファンミーティングのノリなのだ。でも、劇場版の場合は、単体でも、話がわかるような造りが望ましい。


 村上春樹原作のアニメ映画「めくらやなぎと眠る女」。監督・脚本はフランス人のピエール・フォルデス。東日本大震災の5日後から始まる物語。ある日、さらに東京を襲うという地震から救ってくれるというカエルくんが現れて。

「めくらやなぎと眠る女」★★★★☆

 村上春樹の短編5編を脚色。アニメとしてはライブアクションのリアリティを強調した画面。以前「エベレスト神々の山嶺」のアニメ化もフランス映画だったけど、そのテイストに近い出来。

 日本のアニメなら、登場人物たちの目が異常に大きかったりする。逆にフランス人が日本人を描くと極端に小さくなって、鼻は思い切り団子鼻。これって、彼らの変わらない偏見。しかし、表現する方はそうとは思わず、悪気なく、表現していると思うと、少し複雑。(村上春樹へのリスペクトがあってのことだと思うので)

 物語としては、二人の銀行の同僚にまつわる展開だけど、話はそれぞれ別に展開する。片方は妻に去られて、精神的放浪する話。もう一人は孤独な男。彼の元に巨大なカエルが現れて、東京を地震から救う話。

 このアニメを観て、自分が村上春樹の小説の苦手な部分がわかった。彼のパラレルの展開とセックス感に共鳴しないのだ。特にセックス感はまったく違う。性の描写は多いのだけど、色っぽくない。

 吉行淳之介なんて、指先からエロティックなおじさんだったけど、村上春樹には、そんな色気がない。なんか、初体験を妄想する男子レベルなのだ。

 アニメの絵の世界はリアル。なので、実写で映画化した方が良かったのでないか?と思った。日本人の俳優を使い、カエル君だけはアニメにする。最後まで、フランス人の描く日本人像は違和感が残る。

 

 昔、田中康夫のベストセラー小説「なんとなく、クリスタル」で日本では知られる人になったミュージシャン、ポール・デイビス。彼が1977年にリリースしたアルバム「SINGER OF SONGS・TELLER OF TALES」をディスクユニオンで580円で購入。

 1曲目は田中康夫の小説に登場した「IGO CRAZY」。日本では、この曲ゆえにAORの人のように思われているけど、アルバムを通して聴くとポップなカントリー調なアーティストなのだと感じた。経歴を調べたら(wikiの日本語は見つからなかったので、英国版)デビューは70年で基本はカントリーの人だった。

 彼のことを知ったのは、クリスタルで有名になる前。青山のパイドパイパーハウスに足繁く通う音楽好きの友人から紹介された。このアルバムがリリースされて1年後ぐらい。

 当時はビリー・ジョエルは有名だったけど、ボズ・スキャッグスはボーダーだった頃。このアルバムジャケットからは、想像できないほど、優しい声の持ち主にきれいなメロディ、押し付けのないアレンジ。いかにも、パイドパイパーハウスおすすめのアルバムだと思った。

 時代はレコードからCDになり、配信になったけど、音楽の本質は変わらない。いい音楽って時を越える。