なかなか弾いているヒマがないからね。
そう言って、もうピアノは弾けないことにしていた。
実際に、昔のような指の筋肉は残っていない。
リストの楽曲を追いかけようにも、そもそも筋力が足りない。
音楽って、意外なくらい筋力が資本なのよね。
ただそれが、最近また少し弾いてみようという気になった。
なんとなく銀座のヤマハ本店に行って楽譜を眺めていたら、
武満徹の楽譜を見てみようと思い立ち、いくつか見てみた。
これなら弾けそうだ、と「リタニ」「雨の樹素描Ⅱ」を買った。
ショット版の楽譜を買うのは初めてである。
っていうかいわゆる「現代音楽」をやるの、初めてじゃない?
いま、「雨の樹素描Ⅱ」に取り組んでいる。
速いパッセージもないし、複雑な和音があるわけでもない。
♪=90だからかなりゆったりとしていて、音数も少ない。
ただ、冒頭から四声を処理し続けなければいけない!
さらに、音数が少ないから、拍子を正確にとるのが大変。
きちんと数えておかないと、入りが遅れたり早すぎたりする。
こんなにきっちり仕掛けられていた曲だったんだ、と感心しきり。
一年ほど前、妻が武満徹の「径」を練習していて、
おもしろいよと言っていたのだが、やってみて意味がわかった。
彼の曲は、恐ろしく丁寧に作られているのだ。
精巧な木工品のように、丁寧に緻密に。
楽譜を紐解いて、この人は好きだなあと思った。