国際芸術祭あいち2025 灰と薔薇のあいまに

瀬戸市のまちなか

2025年10月13日(日)


 
あいち2025、2日目の午後は瀬戸市のまちなかの会場です。尾張瀬戸駅が最寄り駅、名鉄瀬戸線の終着駅です。ここはその名の通り瀬戸物の一大産地でした。
 
しかしそれだけではありません。なんとあの将棋の藤井聡太永世名人の出身地。

 

 

駅の前に大きな将棋の駒のオブジェがあったので、駒の産地だったっけ?とか頓珍漢なことを考えていました。芸術祭には全く関係ない話から始まりましたが大事なことですので、紹介しておきます。

 
ここは街の芸術祭らしく、家屋、商店、工場などに作品が展示されていて、歩いて巡る形式です。自転車は不要なくらいの距離感で作品が点在しています。


S11 マイケル・ラコウィッツ  (梅村商店)

 

ISに爆破されたイラクの遺跡を再現するアート作品。失われたものをどうやって後世に継承するのか?今回の芸術祭のテーマに直球で回答する作品です。日本人の芸術監督であれば、なかなかこのようなテーマと作品を選択しないだろうと思います。

 失われた遺跡を整理して分類し記録してあり、パーツごとに再現しています。再現といっても廃物を用いアートとして表現。そうすることで政治的な議論や、正式な遺跡研究のあり方といったことと立場をずらし広くメッセージを伝える強さを備えていると思います。

 

 

S10 沖潤子  (無風庵)


瀬戸市のまちなかの展示場所は、それぞれ街のランドマークになるようなところを選んでいます。無風庵は近代美術工芸家、藤井達吉のゆかりの建物です。



ここに展示されているのは針供養にヒントを得た作品です。手によって残される記憶。その奥に縫い込まれた強い思い。


 

何もかもスマホで見ることができるようになった時代において、物にこめられた声なき声を感じ、想像することの大切さを思い起こさせます。

 

 

S07 冨安由真


手で作った花びらが部屋一面に散りばめられています。花びらとともに積み上げられた白い砂は、焼き物には使えない不純物です。花びらも焼いていないので時間と共に乾燥して崩れて行きます。



真白な無味乾燥な室内はかつてハゲ山だったこの地の姿にタブってみえます。




時折、赤い照明がこの空間を一面炎のような赤で満たします。かつて人の営みがこの地に与えた傷跡を暗示しているのでしようか。


 

S09    ロバート・アンドリュー  (株式会社加仙鉱山)

 

これは陶磁器の原料となる土をそのまま掘り出してきて、糸を通し、土の色を糸に写す仕掛けです。糸は見てもわからないくらいゆっくりと動き、やがて壁に設置されている糸がグラデーションの模様を描き出します。自然が地層を形成するのに比べれば早いですが、作為のないシンプルなやり方で、時間をかけてしか表現できない美もこの世にあります。


 

S08 アドリアン・ビシャル・ロハス  (旧瀬戸市立深川小学校)

 

廃校となった小学校を使った作品。中に入ると1階を全部使い切って壁、天井、窓と一面に絵が描かれています。

 

 

 

 

描かれているものは様々ですが、人類が誕生する以前の地球の姿を彷彿とさせる絵柄が多かったように思います。 


 

一方で、学校の内部を錯視的に処理したトリックアート的な絵もあり学校が別の世界とつながってしまったような、空間を創り出しています。



S06 panpanya   (松千代館)

 

panpanyaは漫画家です。緻密な画風、作風で、今回瀬戸市に丹念に取材し、その歴史と文化を紹介する漫画を描きあげました。松千代館はもと旅館。1階にその漫画が展示されていて読むことができます。また、漫画の一場面が瀬戸市のまちなかのあちこちにも展示されています。



S05 メイサ・アブダラ  (瀬戸市新世紀工芸館)

 

かなり、個人的な妄想に近いイメージを描くアーティストです。生まれている子供は恐竜。この後、子供を育ててゆく絵が続き、最後は大きく成長した恐竜に自身が喰われてしまいます。作者は子供を産むことに罪悪感を持っているそうで、その強迫観念をそのままカタチにしています。

 何も知らずにこの絵を見るといろいろな解釈が可能で、それが展示されている理由でしょう。



 

 

S01    佐々木類  (旧日本鉱泉)


銭湯を使ったインスタレーションです。屋内は窓を塞ぎ照明を落とした暗い空間で、とても綺麗でした。



ガラスに封じこめられた植物は何を意味するのでしょうか。この地の歴史に重ねる時、守るべきものが何だったのか、心に留めておくために展示していると思います。



 

S02    ミネルバ・クエバス (瀬戸市美術館)

 

大きいです。吹き抜けの屋内、2階の天井まで届く高さ。焼き物によるレリーフです。メキシコ人のアーティストが、日本のモチーフを集めて制作しました。

 

 

S03 シィエハ・アル・マズロー

 

使われていない噴水に、大理石で制作した波をあしらった作品です。写真で見るといい感じです。現地では、黒くて建物に馴染んでしまいアート作品と気づかないくらい目立っていませんでした。

 



 

瀬戸市美術館で写真展が開催されていました。瀬戸市がまだ山を削って土を掘り出し陶磁器を大量に生産していた時のものです。

 

臼井薫



東松照明



東松照明


当時の生活をよく伝える良い写真が多く見ていて飽きませんでした。

 



こちら瀬戸市美術館のあった瀬戸市文化センターです。見ての通り、あまり人がいませんでした。たまたま今日がそうなのか、今回はいつぞやと違い話題になっていないのか。芸術祭も日本各地で開催され飽和状態なので派手な話題がないと人は動かないのか、今年は大阪万博でお腹いっぱいになってしまったのか。


少しテーマがわかりにくいとは思いました。しかし、内容は世界の情勢をふまえた示唆に富む作品が多く、とても良かったです。私の感想は見て損のない芸術祭でした。



 

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