国際芸術祭あいち2025 灰と薔薇のあいまに

愛知県陶磁美術館

2025年10月13日(月)


 

あいち2025、2日目です。午前中は愛知県陶磁美術館、午後は瀬戸市を周ります。

 

愛知県陶磁美術館はその名の通り、陶磁を専門とした美術館です。名古屋からは遠いようで近く、近いようで遠い感じ。ジブリパークのある愛・地球博記念公園の先、リニモ「陶磁資料館南駅」から徒歩15分のところにあります。あいち2025がなければ、おそらく来なかったでしょうが、来る価値のある美術館だと思いました。

 

ここでは「灰と薔薇のあいまに」をテーマに陶磁器の作品を多く展示しています。陶磁器は釉薬に灰を用いますから、素材がテーマとつながってもいます。

 

 

C11    ハイブ・アース

 

 

美術館の敷地内の土を使った版築によるプロジェクトです。版築とは土を型に入れて固める建築の技法です。日本の古い家屋や中国の城などが、版築で建てられています。

 美術館の庭に穴を掘り土を取り出して、別の場所で運んで版築のオブジェを制作します。芸術祭が終了したら壊してまだもとの場所に土を戻します。この四角い台のような版築はカチカチに固くて乗っても壊れません。

 

 

C02 ワンゲシ・ムトゥ

 

編み上げた大きな籠。中にいるのは蛇です。この他に亀がいる籠もあって、それぞれ民族的な意味があったのですが忘れました。

 

 

美術館の中に入ると巨大な大蛇が横たわっています。蛇の腹は大きく膨らんでいて、妊娠しているのか、獲物を食した後なのか。蛇の頭は美しい人の顔をしていて枕に頭をのせて眠りについています。天井から吊るされている秤も合わせて隠喩もあるのでしょうが、そんなことよりこの化け物の生々しさが強く印象に残りました。

 

 

 

 

イギリスがアフリカを植民地にしてジャングルを燃やして、大地に傷跡を残した歴史をテーマにしたインスタレーションです。アーティスト本人が役を演じています。文明の利器を担いで坂を歩いて行きますが、やがて得体の知れないマグマのようなものに飲み込まれていきます。

 開発と破壊、世界各地で現在も続くこの課題はわかっていてもなかなか解決しない問題です。

 

 

C01 エレナ・ダミアーニ

 

平たくならした粘土の上で、貝の形をした石を動かして造りあげた作品です。貝を転がした跡の模様は幾何学的な形をしています。アーティストが造形したとも言えますが、この貝がもつ性質が具現化しただけの作品といった方が正しいと思います。創作とは人によるものとは限らず、どこにでも存在しているもの。それを発見する行為もアートの一つです。

 

C04 ヤスミン・スミス

 

世界各地の土を集めて並べました。土には色があります。茶色ばかりではありません。黒、白、赤、など様々です。土というのはその土地の長い歴史を担い体現しているもので、地元のたたき上げの代表選手みたいなものです。そう思うと、この並んだ土に高校野球の開会式に並ぶ高校球児を見るような高揚感が湧き上がってきませんか。

 

 

C03 マリリン・ボロル・ボール

 

陶器の壺から溢れる液体のようなものはコンクリートでできています。土木・建築の象徴のような素材。そして流れ落ちた床に人物の顔を形作っています。各地域の権力者たちです。

 発展途上国が外国の資本を受け入れ経済を発展させる道筋は属人的な運用も多く、その結果、スキャンダルや独裁といったことにつながることは珍しくない。日本比べると、具体的な顔まであげて社会的課題を取り上げる作品が海外には多いように感じます。

 

 

C09    永沢碧衣

 

永沢碧衣は熊をテーマに活動しています。興味を持つあまり狩猟免許を取得し、実際に熊を撃ちながらマタギとも交流、実体験を元に制作しています。展示しているものも絵ばかりではなく、熊の毛皮などもありました。人里離れた山に住んでいた熊たちが、人間に危害を加えることができるくらい近くに現れるようになった昨今、作品はどう変わっていくのでしようか。崇高な存在として見続けていられるのでしようか。

 

 

C05   西條茜

 

奇妙なカタチの大きな陶器は見るものではなく使うもの。来場者は触ってはいけませんでしたが、映像では手を突っ込んだり、みんなで押して動かしたりしていました。他にも仕掛けがあります。あちこちの穴は別の穴につながっていて、しゃべると別の穴から音がもれ聞こえるようになっています。口をつけて声を出したり、耳をつけて音を聞いたり。側から見ると滑稽なものですが、体験している人しか感じられないものがある作品です。

 

 

C12 加藤泉

 

 

加藤泉は私がこのコラムを始めた頃に原美術館で個展を見たことがあります。ここでは、アフリカの美術を想起させるような人物造形と美術館の所蔵する陶片との相性がとてもイイ。畏まった現代アートの舞台からはみ出している感じが、楽しく見えます。

 

 

 

 

三島喜美代

 

あいち2025とは関係ない展示でしたが違和感がないのでご紹介。ゴミをアートにできる稀有なアーティスト三島喜美代。ゴミを集めて固めただけなのですが焼き物と近い。そして凄い存在感。それだけで優勝。

 

 

 

なぜ、この美術館が会場の選ばれたのか不思議だったのですが、陶磁器という技法であいち2025のテーマに沿う多様な表現があり感心しました。

 

もちろん常設の陶磁器のコレクションは充実しています。ここは日本が明治時代に国策として陶磁器の輸出を強化していた頃から産業技術研究所が集めた資料、コレクションを引き継いだ美術館なので、古今東西の品々を網羅し体系的に展示していて、充実しています。この守備範囲の広さは他では見られないものだと思います。次回はジブリパークとセットでまた来ても良いと思いました。

 午前中はここまで。午後から瀬戸市に向かいます。

 

 

 

 

 

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