円山応挙 革新者から巨匠へ  

三井記念美術館

2025年10月5日(土)




円山応挙は江戸時代中期から後期に京都で活躍した絵師です。描き方を型として習得していく日本画の流れにあって見たものを観察して描く写実を重視した日本画を描き、当代随一の画家となりました。

 

はじめの監修者山下裕二氏のメッセージが面白くて、近年、同時代の伊藤若冲や曾我蕭白に人気で押されているとか、写実で有名であるものの現代の我々の眼にはそうは見えないだろうとか、ネガティブなことも書いてありました。


時代時代で見え方も変わりますから、そういうことわりを入れるのも、専門家の大事な仕事だと思います。 


 

3-05  眼鏡絵 三十三間堂

円山応挙は二十代の頃に 眼鏡絵を描くことで西洋の透視図法を学んだと言われています。


眼鏡絵って何?


投資図法で描いた風景画を「反射式覗き眼鏡」という望遠鏡のような道具で覗くと立体的に見えるものです。3D映画のようなもので、当時流行っていました。


実物展示もありまして、確かに江戸時代の風景が立体視のように見えました。凸レンズひとつ入れているだけなのに不思議なものです。

 

 

5-10 江口君図

江口の遊女を観音菩薩に見立てた美人画です。応挙の美人画ってピンときませんが、これは上手いです。綺麗な着物を着た女性が象の上に座っています。この作品には元ネタがあると言われています。西洋の写真で鎧を着た女性が象の上に座っているものがあり、着想はそこから得たらしい。著作権などない時代ですから、あらゆるものから学び吸収していく絵師の貪欲さが伺えます。


 

4-18 龍門図 3幅

円山応挙は鯉の絵が得意です。この3幅の両側の2幅の池の鯉はとても繊細で実物のようです。対して中央の天に向かいまっすぐ登る鯉は流れ落ちる水の直線的な描写と合わせて、真上からみた一直線の棒のような描き方。なにか不自然です。鯉が龍に変わる瞬間を表現しようとした工夫のひとつと思います。すべての試行錯誤が成功する訳ではありませんから。

 


4-04 竹雀図屏風  6曲1双

竹林は墨一色で描き、雀は色をつけています。グレーで描かれた竹は白い十分な余白と相まって現実の竹林に近い奥行き感を感じさせます。心が落ち着くし眺めていて飽きない屏風です。

 

 

2-01 遊虎図襖 (香川・金刀比羅宮)



香川のこんぴらさんから、取り寄せた襖絵です。円山応挙の写実の力が遺憾無く発揮された絵ですが、何か虎らしくない。それもそのはず、円山応挙は虎をリアルに見たことがないからです。


虎を写実的に描くにあたり入手できたのは虎の毛皮。ここから断片的な情報を元に想像して描きました。応挙の写実力を見るのであれば、毛並みの描写です。監修者の山下氏が気にしているのはそういう部分。


 

4-01 雪松図屏風  6曲1双



国宝です。

金地、墨、紙の白の3色で描ききった屏風絵です。

本物とは思えないくらい保存状態が良くいつ見ても輝いています。コントラストが強く見える墨の黒も近づいて見ると意外に淡い調子です。枝ぶりや葉も雑というか、シンプルなのに離れて見ると強い存在感のある描写絵です。



6-02 青楓瀑布図  1幅


これいいですね。滝壺に湧き上がる水煙、うねる水の流れ。霞んで見える楓の枝がその奥の滝との空間を強調しています。写実のようで写実でない、しかしその場にいるような臨場感がある一幅です。



5-16 風雪三顧図襖  

劉備、関羽、張飛が、森の庵に諸葛亮孔明を軍師に迎えに行く、いわゆる三顧の礼の場面です。大きな画面に描かれた風景と馬にまたがり語らいながら進む義兄弟。物語の一場面として想像かき立てる絵画です。

 


2-02 竹林七賢図襖 (香川・金刀比羅宮) 

これもこんぴらさんから取り寄せた作品。臨場感があります。竹の描写。余白を使った空間構成。七賢人の並び。こんぴらさんは三井家が支援していたので、今回の出張展示が実家したようです。いずれ現地に見に行きたいと思っています。人物の顔の部分が損傷しているのは暴漢によるものだそうです。残念ですが、しかしこの襖絵の良さはその程度で損なわれるものではありません。


ちなみに竹林の7賢とは、

  • 阮籍(げんせき)
  • 嵆康(けいこう)
  • 山濤(さんとう)
  • 劉伶(りゅうれい)
  • 阮咸(げんかん)
  • 向秀(しょうしゅう)
  • 王戎(おうじゅう)

 

4-03

竹鶏図屏風 伊藤若冲  2曲1双

梅鯉図屏風 円山応挙  2曲1双 

2つの屏風がひとつの作品のように並べて展示されていました。研究によってこの2つの屏風の地の金箔は同じものとわかっていて、そこから発注者は同一であったと考えられています。伊藤若冲の竹鶏図の鶏は少しトリッキーな描き方をしています。頭の部分がまん丸で、写実とはまた違う。対して円山応挙の鯉と梅の木は写実性が高くオーソドックスな描き方。当代随一の絵師二人に注文した金持ちがいたようです。まったく羨ましい限りです。

 

 

秋は美術展の季節。円山応挙は最近人気が落目などという風評もあるようですが、意味はないです。200年以上前から変わらずそこにある名品です。お見逃しなく。

 

 

 

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