瀬戸内国際芸術祭2025 春会期

犬島(いぬじま)

2025年5月4日(日)


 

瀬戸内国際芸術祭、3日目です。今日は犬島


高松港8:00発の船に乗るため、1時間前にチケット売り場に着くともう並んでいました。




瀬戸内国際芸術祭の島々の中で、犬島は高松を起点にするとアクセスがあまり良くない。直行便がなく、高松⇄豊島⇄犬島という航路は船の本数も少ない。



島は小さく作品点数も多くないので、1日使うと時間が余るくらい。とはいえ、タイパの追求が旅の目的ではありませんから余った時間はダラダラ過ごすことにします。



犬島港に着いたらすぐそばの案内所を抜け、開けた場所に出ます。向こうに煙突が見えます。



海を左手に眺めながら少し歩くと最初の目的地です。



07 犬島精錬所美術館


 

ここは、100年ほど前に銅の精錬所がありました。しかしコストが見合わずに操業10年で閉鎖。その後、放置されていたのを環境に配慮した美術館として再生されました。


  • 三分一博志の建築
  • 柳幸典のアート作品
  • 精錬所の遺構

の3つで構成されています。

 

何かを展示する美術館というより、美術館とその敷地全体が作品です。


美術館は地中にあり、内部は撮影禁止。


入り口でスタッフの方が構造を説明してくれます。中は照明のない長い一本道のトンネルような通路で曲がりくねっていて真っ暗な迷路のようです。前方に赤い太陽の映像が見えます。進んでいくと映像は鏡に映ったもので、どうやらかなり遠くにあるようです。振り向くと後ろの客の姿がシルエットになって見えます。これも鏡に映ったものなので、距離感はつかめません。


この美術館は電気を使わず自然エネルギーを利用した空調システムを構築しています。例えが難しくて恐縮ですが、ダコタ・ファイヤーホールや、ロケットストーブのような構造です。



通路の奥の展示室は天井にガラス窓が設置され、太陽の光が差し込みます。その光が温めた空気が煙突から空へ上昇していくことで、通路の中の空気を入り口から出口へ流しています。


通路の上の地上には木々が植えられています。木々の根の水分を含んだ地面が地中の温度を下げて通路の空気を冷やしそれが涼しい風となって通路を吹き抜けていきます。

 

風に押されて長い通路を歩き奥の展示室にたどり着くと、そこには三島由紀夫をテーマにした柳幸典の作品があります。これは難しいので今回は端折りまして、外へ出てみましょう。




階段を上がり石垣の上に上がって行くと見晴らしの良い場所に出ます。


 

滅びた文明感。何となく「天空の城ラピュタ」を思い出します。



ラピュタもロボット達が守っていたように、この場所もただ荒れるに任せてあるのではなく、緑にも、順路にも、工場跡にも人の手が入っていて整理しています。


 

日本庭園と同じく、自然のままのようで、美意識のもとに作り上げられた廃墟です。

 

 

とても絵になります。朽ち果て残った精錬所の壁に覆う蔦の葉の緑が、色彩の豊かさと時間の経過による調和を与え、見るものに懐かしさすら感じさせます。



これから美術館の敷地から出て、島内にあるアートを見てまわります。



INUJIMAアートランデブー  大宮エリー

10-1 フラワーフェアリーダンサーズ

10-2 光と内省のフラワーベンチ

 


港の反対側の浜辺にある作品です。 豊島にもあったようにここにも海辺の椅子の作品がありました。ここに腰掛けて見る開けた瀬戸内海の美しさは、この場所に来ないと感じられない。天気が良ければ、素敵な場所です。



 ただこの椅子は座らず離れて見ても美しい作品です。



09  犬島 くらしの植物園  妹島和世+明るい部屋


その名の通り植物園で、作品というよりワークスペースです。イベントやワークショップを行なってもいるそうです。



03 A邸 イエローフラワードリーム ベアトリス・ミリャーゼス



ここからいくつか作品のタイトルに「◯邸」とついたものが出てきます。これは「家プロジェクト」と呼ばれるもので犬島の生活に調和するアートを目的としたギャラリースペースです。


 

この作品は円の形をしたギャラリースペースA邸のために制作されました。側を通りかかると派手な色彩の模様が見えてきます。しかし中央の椅子に座ると、作品を真横から見る角度になり、島の景色だけが目に入るようになっています。島の景観を守りつつ、アートを展開するという慮った作品です。

 

 

01 F邸 Biota(Fauna/Flora)   名和晃平

 

大作です。ビックバンにより生まれた生命が進化と停滞を選ぶ様を表現しているそうです。確かにそういう感じです。

 

 

別の展示スペースには、ビックバンの後に生まれた生命のようなもの達がいます。漫画「亜人」を思い出したのは私だけでしょうか。

 

 

06 石職人の家跡  浅井裕介

 

犬島は石の産地でした。日本中の城、神社に石を輸出してきました。大阪城の蛸石も犬島が産地らしいです。これは石職人の家の跡に絵を描いたものです。島の自然、文化、歴史を残した壁画のようなものでしょうか。

 

 

02 S邸 コンタクトレンズ  荒神明香

 

細長い壁のような展示スペースS邸にコンタクトレンズのような薄いレンズを大量に配した作品です。この作品も借景というか、環境調和型というべきもので、地方の芸術祭の作品の方向性、つまり、その土地でしか見れないものを作るというコンセプトを感じます。





10 INUJIMAアートランデブー 生きているということ  大宮エリー


INUJIMA アートランデブーとは、この4月に亡くなった大宮エリーが始めたプロジェクトです。犬島のそこかしこにアートを配置して、島民、訪れる人の出会いの場とするという構想だったそうです。前述の椅子の作品もそのひとつ。道半ばで途切れてしまったのは残念ですが、誰かが志を継いでくれるのではないでしょうか。島を訪れるアーティストが感じることは同じような気がします。

 




犬島の作品は以上です。取り上げてない作品もあり簡潔に書いているのですが、文章にするとボリュームがありますね。時間は予想通り余ったので船の出発までブラブラ、ダラダラしていました。

犬島港は15:47発、豊島の家浦港には16:17着。家浦港には高松行きの船のチケットを買うための長蛇の列ができていました。他の島から来る人、豊島に来る人が集中するので仕方ないです。あまり人が多いのでヤバそうと思っていたところ、やはり臨時で船が増便されることになりました。私は何とか先発の便に乗船できましたので、家浦港17:20発、高松港17:55着で無事に戻って来ました。





ということで、3日目終了です。明日は最終日です。



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