瀬戸内国際芸術祭2025 春会期
豊島(てしま)
2025年5月3日(土)
瀬戸内国際芸術祭、2日目は豊島です。
高松港から豊島行きの9:00発の船に乗ります。豊島は船便が少なくフェリーがないので、乗船できないことがないよう早めに1時間前にチケット売り場に行きます。すでに整理券配布のための列ができていてちょうどいいタイミングでした。
小さな船ですが甲板もあるので、リアルに海を眺めようと上のフロアの一番前の椅子に座ります。ところが出航すると寒いのなんのって。船は意外に速く風が強い。5月はまだ風が冷たくて、薄着の人は耐えられず下のフロアへ降りて行きました。
家浦港到着。
豊島はだいたい4つのエリアに分かれます。
- 家浦(いえうら)
- 唐櫃浜(からびつはま)
- 唐櫃岡(からびつおか)
- 甲生(こう)
レンタルサイクルは予約完売。バスの便数と定員は限られているので、先に遠い方からまわるのが得策です。始めに唐櫃浜エリアに行き、唐櫃岡へ歩いて戻ることにしました。唐櫃浜→唐櫃岡→甲生→家浦というルートです。
唐櫃浜
唐櫃浜の港のバス停留所からさらに先に歩いて10分ほど、砂浜の前にそれはあります。
15 心臓音のアーカイブ クリスチャン・ボルタンスキー
家浦港から最も離れた場所にある一戸建ての作品です。海辺にある隠れた病院か研究所のようです。
入り口では白衣を来たスタッフがチケット購入の際に注意事項を説明します。
撮影不可ですので、内部の様子は文章で説明します。(撮影可でも文章の説明は必要ですが。)
メインの展示室は窓のない密室のような構造で、入り口から奥に細長い部屋になっています。中央に天井から電球が一個吊り下げられています。照明はこれだけです。部屋全体に誰かの心臓の心拍の音が流されていて、この鼓動に合わせて電球が点滅します。
この音はもちろん実際に生身の人間から録音したものです。1分ぐらいで別な方の心臓音に切り替わります。心臓音にもいろいろあります。早い音、遅い音、強い音、弱い音、ハッキリした音、ぼんやりした音。音に応じて点滅の仕方が違います。
音はするのに何故か電球が弱々しくしか光らず暗いままの心臓音もあります。この心臓の主は大丈夫なのか、異常はないのか、心配になってきます。音と電球の明滅だけなのにその向こうにいる誰かの命の火のゆらめきにいろいろな妄想が湧き、心が動かされる作品です。
来館者は申し込めば、この施設で自分の心臓の音を録音し、アーカイブとして保存、作品の一部として提供できます。もちろん有料です。
14 勝者はいない イオベット&ポンズ
元来た道を戻る途中の広場にこの作品があります。誰でも遊べるよう開放されているのですが、実際に遊んでいる人たちを見たのは初めてです。プレーしていた方は中国人ぽかったです。さすがスラムダンクが人気の国。バラバラにシュートを決める様子は確かに誰が勝者かよくわかりませんでした。
唐櫃岡
唐櫃岡へ戻ります。唐櫃浜から高低差がある登り道になるので、自転車、徒歩の場合は覚悟した方がいいです。私は徒歩派なので、坂道を歩いて登りました。
坂道を登ると棚田と海の見える開けた場所に辿りつきます。そこにあるのがこちら。
13 豊島美術館
これは外観。内部は撮影禁止です。豊島美術館については回をあらためて書きますので、ここまで。
ここからもう少し歩いて山間の作品を巡ります。
21 再び言葉に満ちた部屋 ジェナ・リー
豊島に滞在して古民家を使って制作したインスタレーションです。以前は別の方の作品が展示されていました。この島で使われていた食器を集めてキレイに洗って展示しています。
この島に住んでいた方々の記憶を形にした、どこか懐かしさのある作品です。日本の家屋なので畳を敷いて靴を脱いで座って観る方がより伝わるものが多かっただろうと、ちょっと思いました。
12 ささやきの森 クリスチャン・ボルタンスキー
次の作品は唐櫃岡からもかなり歩きます。しかも登りです。
歩いた森の中にある作品です。木々の間にたくさんの風鈴が据え付けられています。
風が吹くと一斉に風鈴が鳴り始めます。前回来た時は無風状態で、鈴がまったく鳴りませんでした。
実際はそよ風くらいで、十分鳴ります。日本人にとっては親しみのある響きですが、人の住んでいる場所で聞くのと、森の中では一味違います。
09 あなたの最初の色 ピピロッテイ・リスト
天井から吊り下げられた円いスクリーンに映し出される映像作品。結構面白そうだったのですが空調の効いていない家屋で蒸し暑く、上を見上げ続けるのは厳しいのと、時間が読めないので早々引き上げました。
10 島キッチン
ガイドブックにもよく紹介される場所です。飲食店でもあり、休憩場所でもあります。以前来た時はすごく混んでいて絶対入れない感じでしたが今日は空いてました。ゴールデンウィーク中なのにそういうこともあるんですね。そうと知っていればコンビニおにぎりを昼飯に買わなかったのに。
08 空の粒子/唐櫃 青木野枝
細いので、作品に見えない。これが野外彫刻の難しいところです。ホワイトキューブに展示されていれば存在感があったでしょう。
甲生
甲生は家浦港を起点にして見ると、唐櫃浜と反対側にあります。作品数は多くなく滞在時間はそれほどかからないです。でもマイクロバスの便数は少ないので注意が必要。
23 線の記憶 塩田千春
アートの機能のひとつに記憶を封じ込めるというのがあります。肖像画や人物彫刻などがわかりやすい。対象に永遠の命を宿すともいえます。
塩田千春の作品はモノを記憶の中に留める力があります。放置されて気にも止められなくなった不要になモノが鮮烈な赤い糸に封じ込められることで存在感を取り戻します。
家浦
03 針工場 大竹伸朗
入り口が立派で扉があることからもわかるように開館時間があります。気をつけないと閉館してしまうので、油断なりません。中に入ると、あるのがこちら。
船をひっくり返したような大きな物体は、実際に豊島で船の建造に使用されていた型を展示しています。この場所はその名の通り、元針工場。豊島にふさわしい作品を構想した結果、豊島にあった不要なものを集めて制作したデカいコラージュです。
大竹伸朗らしいハッタリの効いた作品です。
02 豊島横尾館 横尾忠則 永山祐子
私ほかねがね芸術家としての横尾忠則はフェイクではないか?と感じていてその辺のうさんくささを、見事に3D化したのがこの美術館。アートの秘宝館といった方が良さそう。
視覚の驚きに満ちた美術館で一見の価値があります。基本、内部の撮影は禁止。トイレはOKです。
これ、アート作品でもあるので用を足しにくかったです。
以上、豊島アート巡りは無事コンプリートしました。
これから高松への帰路に着きます。帰りの船便まで1時間ありますが、家浦港はもう長蛇の列。船は定員以上決して乗せませんから、乗り遅れると島に取り残される可能性があります。
もし取り残されたらどうなるか?
選択肢は以下の通り。
- 繁忙期は追加の便が出ることがある
- 船上タクシーをチャーターする
- 島に泊まる
追加の便の出航は、船会社が往きの切符の売れ具合で判断しているようです。もちろん出航は遅い時間になります。船上タクシーは4〜5名ほどの定員で、1〜2万円あれば乗れるらしい。その辺に会社名と電話番号を記した看板があるのでそこに電話すればアクセスできます。島に泊るのは宿の混み具合次第。
まあ、なんとかなるということです。なりたくありませんが。
無事に高松港に帰って来ました。これは豊島の行き来に乗った船、「まりんなっちゃん」。
ということで、2日目はここまで。
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