Perfume Disco-Graphy 25年の軌跡と奇跡
TOKYO NODE
2024年10月12日(土)
結成25年を迎えたアイドルにしてアーティスト、Perfume の展覧会です。よくテクノポップユニットと称される楽曲を耳にしたことがある方は多いと思います。しかし、ライゾマティクスが手がける最先端のテクノロジーを駆使したステージを見たことがある方はそれに比べれば、多くないでしょう。
私はファンを名乗るのはおこがましいですが、ライブに行ったことはありますし、アルバムも何枚かは持っています。年末から始まるツアー「ネビュラロマンス」のチケットも購入しました。そこそこは見ておりますので、このコラムにふさわしく、メディアアートの視点でこの展覧会を紹介します。
目玉は実際のステージ演出やパフォーマンスに使用されていたテクノロジーを体験できる展示です。
We are Perfume
これは体験型展示ではなくインスタレーションです。
ステージの演出でもよく使用される3人の立ち姿の3次元データを元に白い玉を使って、巨大な3人の姿のオブジェ作っています。この玉はレーザーを当てると強い光を放つものです。おそらく玉の位置は事前にデータを入力するのではなく、完成したPerfume像を複数のカメラでトラッキングして位置を特定していると考えられます。以前ライゾマティクスの作品でレールの上を動く玉にレーザーを正確に照射していましたから、静止した玉に同じことをするのは容易なはずです。
SEと共にナレーションのカウントがあり、25を数えると(25周年なので)複数のレーザーが高速ですべての玉を射抜き、暗闇に3人の姿が光輝く仕組みです。
FUSION
2017年NTTドコモとの共同プロジェクトで行われたパフォーマンスの素材をインスタレーションにしたものです。
のっち、かしゆか、あーちゃんの3人が、それぞれ東京、ニューヨーク、ロンドンと、別々の場所で同時にライブパフォーマンスを行いネットでリアルタイムに中継しました。5G以前の当時、地球上の遠く離れた場所で映像をほとんど遅延なく通信できることが凄いことで、これはNTTの技術です。
三角のセットの中に映る3人の一糸乱れないダンスは、お互いの姿が見えない中、タイミングや動きを合わせる文字通りの離れ技です。演者としてのPerfume の凄さは振付師MIKIKOの指先まで決まっているコンマ数秒、数センチの動きを高いシンクロ率でパフォーマンスをできるところ。
音楽やダンスではコンマ数秒のズレでも不自然になりますが、合成したネット上の映像はあたかも同じ場所に3人揃ってパフォーマンスしているように見えました。ダンスと最先端のテクノロジーの融合というPerfume らしさがよく表れています。
無限未来
Perfume のステージをテクノロジーで支えるライゾマティクスは、最先端の技術を貪欲に取り入れます。ここでは、3人の身体の動きを追従してレーザーが追いかけてきます。具体的にはマーカーを両手に持って踊るのをモーションキャプチャーで捉えるという意外に手堅い手法です。マーカーなくてもできんじゃね?って素人的には期待しますが、ステージは不測の事態が発生しやすく、現地でのテストは本番前日の限られた時間しかできないという悪条件。本番でトラブルを防ぐのもプロの仕事の要件です。「無限未来」の楽曲に合わせてステージ上の空間を自由に動く合計6つ(右手左手で2つ、×3人で6つ)の点が、そのまま光の動きに変わって行きます。
これは体験型で、一般の来場者もマーカーを持ってレーザーの光を操れます。しかし素人の動きを測定画面でみると、動きが小さく滑らかさ欠け、同じような軌道が繰り返されてしまいます。ひとつひとつ丁寧に積み上げた振り付けとスキルがレーザーの光を操ると魅力的なパフォーマンスにつながるのです。
STORY
2015年、アメリカのテキサスで行われたイベント「SXSW(サウスバイサウスウエスト)」で、ステージとバーチャル上で、同時に行ったパフォーマンスです。ネット配信で初めて見た時は驚きました。現場のライブ映像がシームレスにバーチャルな空間の3D映像に切り変わる、バーチャルな空間の映像が再びリアルな映像に戻る。カメラアングルがグイグイ動くCG映像と、リアルな3人のライブ映像が完璧にシンクロします。
これは事前に3人のパフォーマンス映像を撮影して3Dデータとして取り込み仮想空間上での映像を制作しておき、リアルなライブ映像に被せるというのが種でした。その場でプログラムによって実際の映像をバーチャルなものにしている訳ではない、つまり、3人が制作した映像と寸分違わない動きをするのが絶対条件。
この時は通常の振り付けではなく、ステージ上では障子のような縦長の動かせるスクリーンを持って踊るもので、これも含めてバーチャルな映像とシンクロしていました。ネットで見ていた人の方が(私も含めて)驚きが大きかったのではないでしょうか。
一応、体験型ステージになっていて、壇上に上がると姿が背後のスクリーンに映され用意された映像と合成されていました。体験者が再現するのは難易度が高いです。
マカロニ
2021年のツアーで使われた演出です。私は横浜のぴあアリーナMMで見ました。歌い踊るステージ上の3人に当てられた照明で、床面からステージ背景まで3つの黒い大きな影が映ります。照明の位置関係や、あまりに影が黒く大きいことから、本物ではないのはわかります。しかし、その影が本物にしか見えないくらい3人の動きとピッタリ。ぴあアリーナは上から見下ろす観客席だったので床の影と足のつながりまで見えるのですが、ズレることもありませんでした。
こちらも体験型でステージに立つと足元に影が現れて踊ります。たまに振り付けを完コピしている人が現れて、影とシンクロして踊って拍手喝采をもらっていました。
さて、展示内容としては他にも盛りだくさんでした。来場者は圧倒的に純粋なファンが多かったものの誰でも楽しめる内容だったと思います。
虎ノ門ヒルズ TOKYO NODE Gallery は、柿落がMIKIKO率いるダンスカンパニー ELEVEN PLAY の公演、そして今回の Perfumeと、取り上げる企画展の方向性が明確になってきました。展示空間そのものにテクノロジーを組み込んで設計できるので、今後もこのような展覧会が開かれるでしょう。他では見られないものが多いので、要チェックです。
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