DIC川村記念美術館
2024年9月16日(月)
「行こうと思っていたけど、実は行ってなかった美術館シリーズ」
なんてコーナーはなかったですが、そういう美術館はあります。
千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館です。
DICとはDIC株式会社のことで、昔の社名は、大日本化学インキ工業株式会社でした。印刷に使うインク(インキ?)の製造を生業として、世界的な企業となりました。創業家の二代目社長川村勝己が収集したアートコレクションはレンブラントの作品から20世紀の現代アートまで揃えた良質なものです。
それが今月、2025年1月に休館という発表がありました。何でもDICに対して、価値共創委員会が「美術館運営に関する助言」という申し入れをしたそうです。
わかりやすく述べると、美術品のコレクションと美術館の運営は金にならんから何とかしろという内容です。
現状は「ダウンサイズ&リロケーション」から美術館運営の中止まで含めた検討に入るところで、結論は2024年12月までに出すことになっています。
ということで休館に入る前に、急遽見に来ることにしました。千葉県佐倉市は東京から微妙に遠い。今回初めて知ったのですが、東京駅八重洲口から高速バスが出ていました。これが便利で一日一往復、9時55分に出発し、11時2分に美術館着。1時間弱で行くことができます。
着いてみるとチケット売り場が行列で、どうやら私と同じく休館を聞きつけて来たようです。
美術館の周りは公園になっており、とても綺麗でした。これはかなりよく手入れされています。
建物は建築家海老原一郎が設計。見どころは、美しいエントランス。天井の装飾と壁のステンドグラスが印象的。
館内の撮影は作品も含めてNG。今となっては撮影OKにしてSNSで、広めてもらう方が良かったと思います。こんなに綺麗な美術館はなかなかないです。
おすすめは、マーク・ロスコの作品「シーグラム壁画」を展示したロスコ・ルーム。ロスコの作品をこんなにうまく展示している美術館は見たことがない。
元々、新しく開店する高級レストランに展示するために制作していたものの、展示場所の雰囲気が気にいらず契約を破棄。専用の展示場所を切望していたそうです。
この展示室は下絵と完成作合わせて7点が鑑賞者を取り囲むように設置されています。照明と配置がよく考えられており、作品の深い黒と赤の微妙な差が際立ってみえる絶妙なバランスと距離感を作り出しています。
あとはレンブラント「広つば帽をかぶった男」です。肖像画を正しく見せています。このサイズの肖像画は1対1、原寸の感覚を再現する空間設計が肝で、展示室でありながらプライベートな空間にもなっている。
休館するのは勿体ないです。
実業家の前澤友作氏が支援しても良いという発言をしていました。コレクションの国外への散逸を防ぐために一部買い入れてもいいという主旨のようです。前澤氏ほどの資産家でも美術館をまるごと買う訳にはいかないようで、逆にいえば今まで美術館を維持してきたDICは素晴らしい企業だと思います。
経営的な課題も乗り越えて、この美術館がより良いかたちで継続して運営していくことを切に期待いたします。
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