おとなとこどもの自由研究 工芸の光と影展

国立工芸館

2024年8月13日(火)



「工芸の光と影」と言うと、狭い伝統に縛られた世界の栄華と隠された黒歴史を暴く、みたいな内容を妄想してしまいましたが、「おとなとこどもの自由研究」とあるように、いろいろな技法、素材を駆使した工芸ならではの陰影表現をみんなで、勉強しようという健全な内容でした。



三代德田八十吉  燿彩鉢 創生


釉薬を使って色付けした大皿。この透明感、鮮やかな色彩の美しさ、どうやって作ったのでしょう。整った同心円と瞳のような模様、綺麗なグラデーションのコントロール。ここにたどり着くまでに何枚皿を割ったんだろうなどと考えてしまいます。



鹿島一谷  布目象嵌蛙と野草文銀朧接合せ壺


側面の象嵌で施した金色の蛙、蓋の部分の銀朧に施した野草の紋、2つの技法で作られています。



寺井直次  極光


黒漆に白いキツネ。「極光」とはオーロラのことです。深夜に夜空に現れた未知の自然現象に驚き跳び回る姿。

実は暗闇に踊るこのキツネ、卵の殻で描いています。白の発色がなかなか綺麗です。高級な卵かもしれません。画材を集めるために、毎日、朝昼晩3食家族にTKG(タマゴかけご飯)食べさせ続けたのでしようか。



四谷シモン  機械仕掛けの少女2


突然、四谷シモン。この展示空間では異彩を放っています。もちろん人形は工芸の1ジャンルですが、かなりアート寄りな作品。機械仕掛けの少女という設定は個人の現代的な空想の世界で、日本の伝統的な世界観とは真逆とみえるのですが妖しい魅力があります。



池田晃将  電光無量無辺大棗


螺鈿細工の棗。よく見るとすべて数字。現代の超絶技巧。タイトルの「電光無量無辺」という言葉は、電脳空間にも近い響きがあります。古いですが映画「マトリクス」を思い出します。



桂盛行  鶉四分一打出水滴


四分一(しぶいち)とは銀と銅の合金の呼び名。含まれる銀の割合が、1/4(銅3に対して、銀1)なのでこう呼ばれます。

水滴とは書道で使う水差しのこと。大きさは3〜4センチ。うずらの丸まったフォルムが愛らしい。表面の精緻な羽の模様は象嵌です。



加藤土師萌  緑地釉裏金彩飾壺


こんな綺麗な黄緑の釉薬があるんですね。金と混ざり合い、黄色、黄緑、青緑、と変化して見えます。

作者は怒るかもしれませんが、すこし河童にも似ているような。



黒田辰秋  耀貝螺鈿飾文筐


全体が縞模様にも見えますが、黒い部分も螺鈿が敷き詰められていて、光の当たり方で明暗が変わるようになっています。



高橋禎彦  花のような


現代的な色、デザイン。オシャレな北欧の雑貨店にありそうな感じです。そう見えるのは、洋食器に近い形状をとっているからでしょう。透明なものもあるのでガラスとわかりますが、宙吹きなのに、もったりしたかたちで、陶器のようでもあるのが面白いです。



フランティシェック・ヴィッツナー  カット・ボール


外国人作の工芸品も所蔵しています。日本の伝統的な形式にとらわれない自由さ、現代的な感性が違いです。とてもミニマルなデザイン。素材と向き合って生まれるシンプルながら深いグリーンが美しい。



関谷四郎  赤銅銀接合皿


赤銅と銀、違う2種類の金属を組み合わせた皿。名前にも接合とあるように、銀に赤銅を被せた訳でも、赤銅に銀を被せた訳でもなく、つなぎ合わせている。縞々模様なので、接合部分だらけ。違う材質のものをこの薄い1枚の形状に加工したところがすごい。





工芸館が東京の竹橋にあった頃は気軽に行けたのですが金沢へ移転。開館したのが2020年10月。コロナが拡大し、なかなか機会がなく、やっと来ることができました。新幹線の接続も良いのでもっと頻繁に訪れたい場所です。今度は涼しい季節を選びたいです。




 

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