開発好明 ひとり民主主義へようこそ
東京都現代美術館
2024年8月12日(月)
開発好明、変わった名前のアーティストです。作品も変わっていました。わかりやすく言えば、
モノでなくコトを提供するアートです。
美術館のようなホワイトキューブに作品展示をすることは少なく、地方で人を巻き込みながら制作することが多いアーティスト。
まず、入場の際に手提げ袋(ウェルカムキット)を渡されました。中には発泡スチロールのカケラ、カード、手紙が入っています。
ウェルカムキット
これ使って会場内の作品制作に参加しましょう
ということです。
11 投げ彫刻
入ってすぐのところにある来場者参加型作品。ロープの向こうにウェルカムキットの発泡スチロールの破片を投げ込むことで作る彫刻作品です。この3倍くらい積み上がるとインパクトが出てくるでしょう。
14 キョウダイン
こちらは来場者に投げ込んでもらう他力本願な作品ではなく、彫刻作品です。顔がモニターなのは昭和の特撮ヒーロー「宇宙鉄人キョーダイン」から着想を得ています。生身の身体を持たない機械の身体のヒーローで、日常生活を営んでいる時は顔のモニターに人間の顔が映し出されるというシュールな設定でした。
🎵一、十、百、千、万、億、兆、京!
キョーダーインー!
って知らないだろうな。
19 ドラゴンチェアー
小学校で行っているワークショップの作品です。子供たちに自分専用の椅子を自由に作ってもらい連結します。手前にあるのは龍の頭。この後ろに螺旋状に子供たちの椅子を並べて、大きな龍の彫刻になっています。図画工作の授業でもこんなに大きなものを作ることは稀でしょうから、参加した子供は楽しかったと思います。
24 未来郵便局 東京都現代美術館支局
これも参加型作品。ウェルカムキットの便箋に書いた手紙を一年後の自分に送ってくれる郵便局。どこかで聞いたことがあるような仕組みですが、それはおいといて、私も一筆したためて、ポストに入れました。こういう手紙は内容を忘れた頃に届くと丁度良いのですが、うまくいくでしょうか。
25 今プラ
デモというと同じ主義主張を持った同志が集まって行うものですが、そもそも主義主張なんてひとそれぞれ。それでは世の中に言いたいことを言う機会もありません。それなら、自分が主張したいことを勝手に主張するデモを行おうという企画。デモ参加のハードルを下げる妙案。
32 政治家の家
東日本大震災ののちに、開発好明は被災地に入りアートをベースにした復興活動に取り組む中、現地の状況を政治家にも見てもらいたいと考え、政治家専用の観覧スペースを設置、見てもらうために招待状を送付したそうです。実際に現場に訪れた政治家はおらず作品は残りました。
アートを通して社会的メッセージを発信する時、アーティストはどんなKPIを設定し、実現のためどこまでフォローするのでしょうか。作品が残ることが価値なのでしょうか。
41 N/Z
ロシアのウクライナ侵攻に対して、アーティストとして声を上げることはできないか?という想いから生まれた作品です。ネットに上がっているウクライナ関連の画像からシールを制作。共感する来場者に貼り付けてもらうという作品です。
44 巨大オマージュシリーズ ピート・モンドリアン
ここまで参加型作品ばかりでしたが、ここから現代アーティストのオマージュ作品が続きます。モンドリアンのオマージュ。巨大な靴下です。なんで靴下なのかはわかりません。
46 ファンタナシリーズ
ファンタナのオマージュ。但し、カンヴァスには切れ目を入れておらず、切れ目を描いています。画集で見ると切れ目は黒い線に見えることにヒントを得た作品です。それだと意味がないような。
49 R.MuTTuri
マルセル・デュシャンの「泉」のオマージュ。傾けた便器の端に取り付けられた蛇口をひねるとジュースが出てきます。正直だから何?と、思います。元ネタがただの便器ですから、いじって思考を発展させるのもなんか騙されているような。オマージュシリーズは今ひとつな感じ。
51 イブ・クライン・スペシャル
イブ・クラインの人体計測シリーズ、全裸の女性を絵筆にした青い魚拓ならぬ人拓のオマージュ。開発好明自身が全裸となり、ち◯ち◯に絵の具をつけて
男性器のち◯拓をとりました。
イブ・クラインの作品を見ると綺麗に仕上がっていて肉体の生々しさはなかなか伝わりませんが、こちらは、形状といい、サイズといい、下品な生々しさがイメージできてしまう。人体計測でなく、ち◯たい計測でした。
56 Happy Bird Project
配ったフォーチュンクッキーの中の占いの紙に銀の折り鶴を見かけたら良いことがあるというメッセージが入っています。実は町中に折り鶴を仕掛け、幸運に出会う可能性を高くしています。人の心を幸せに導くアートです。
アイデアが豊富で面白い展覧会でした。ほかにコンセプチュアルな作品もありましたが、参加型作品の方が魅力がありましたので、そちらをメインに紹介しています。
ウェルカムキットに入っていた残りの1点はMISSION カードで、不可能な指示が記されていたので交換し(会場内で交換可能)、無事遂行しました。内容は秘密です。興味のある方は東京都現代美術館までお越しください。
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