キース・ヘリング展 アートをストリートへ
森アーツセンター・ギャラリー
2024年2月23日(金)
キース・ヘリングの作品についてひとことで述べるなら、
目に心地よい。
楽しい気分になる。
しかしよく見ると、社会的なメッセージをもつ作品が少なくない。
3 無題(サブウェイドローイング)
無題ですが札束を手に燃やしながら、迫ってくる戦車の顔をした巨人の前で両手を上げる人々の絵は、反戦、平和、背景にある経済システム、利権の構造をシンプルに表現しています。
12 無題
金網を登り乗り越えようとする姿が、得体の知れない動物の背に乗っている姿に重なるこの作品、いわゆる自画像です。
未知の世界に足を踏み入れた先が天国か地獄か。明日への期待と不安が現れています。
20 ドッグ
49 アンディ・マウス
アンディ・ウォーホルとの共作。銀の髪に色眼鏡をしたマウスはウォーホルです。札束に埋もれています。マウスはミッキーマウスを揶揄しています。いつの頃からかディズニーはアーティストの格好の標的となりました。私は、モナリザや、ディズニーを持ち出すアートは好きではないです。
56 キース・ヘリング:84年へ
ダンサー、写真家と行ったコラボを題材にポスターに仕立てた作品です。内容はキースがダンサー兼振付師、ビル・T・ジョーンズの身体にボディペインティングを施し、それを写真家ツゥエン・クウォン・チが撮影するというものでした。
イラストっぽい作品とは雰囲気が違いますが、キース・ヘリングらしさも失っていない。元々の絵描きとしてのポテンシャルの高さが感じられます。
58,59,60 モントルー1983
同じ絵のカラーバリエーションかと思えば、よく見ると絵も違う。踊る人たちの躍動感が楽しげな印象を与えます。色彩の組み合わせも派手でポスターとしてよく目立ちます。
64 レトロスペクト
キース・ヘリングらしいイラスト満載の作品を選びました。今回展覧会を見てみて思ったのは、こういう作品より、メッセージ性の高い作品が多いということ。グッズやTシャツの絵柄はオシャレで可愛いものが多いので、ウケの良い作品ばかり作っているのかと思っていましたがそうではなかったようです。20歳でストリートからアートの寵児となり30歳で亡くなるまで僅か10年。私が思っていた以上に、常に社会的なメッセージを発信し続けたアーティストでした。
68 セーフ・セックス
あっけらかんと立った男性器を描けるのはキース・ヘリングの強み。ペニスをしごいている絵も多くあるのに、猥褻で訴えられないのは明るい作風と、キースがいい人だからでしょう。
71 ヒロシマ 平和がいいにきまってる
この広告、当時見た覚えがある。メッセージがストレート過ぎてあざとく感じた。平和、平和叫ぶだけじゃ平和にはならん、なんて捻くれた目で見ていた頃を思い出す。シンプルで本当に力強いクリエイティブです。
なかなかどうして、立体造形のセンスも持ち合わせています。私はこの手の平面を組み合わせた彫刻作品にいいイメージがないです。イサム・ノグチもこういう作品を手がけた時期がありましたが、こちらの方が断然良いです。
103〜119 ブループリントドローイング
古い作品を集めてまとめ直した作品です。漫画のようなコマ割りで、ストーリーっぽくなっています。UFOやピラミッドのようなものも登場する未知の文明の歴史絵巻のようにも見えます。虐殺めいた絵もあり何かの批判にも受け取れる含蓄のある作品です。文字が一切ないことがかえって高い普遍性を担保しています。
120 ペルシダ
アフリカ美術の影響を受けていた頃のピカソの作品の感じさせます。キュビズムっぽい。キース・ヘリングの作品はどれも同じように見えてしまいがちですが、なかなかどうして、手を変え品を変え作っています。
122〜126 イコンズ
どれも代表的モチーフです。黒く太いイラストの線のインクがエンボス加工ぽく盛り上がっていて豪華な感じです。アイコンではなくて、イコンだからでしょう。力の入れ方が違います。
キース・ヘリングはユニクロのTシャツにも採用されるくらいメジャーで人気のあるアーティストです。ストリートからポピュラーになった人ですが、アートスクールにも通っていたこともありますし、デザインの仕事もしていました。商業的な仕事も得意で世界的に大衆の人気を得ていたのは特筆すべき点でしょう。
展覧会のタイトル「アートをストリートへ」の通り、生涯を通してアートを世界中に届けた人生でした。
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