テオ・ヤンセン展
千葉県立美術館
2024年1月8日(月)
千葉県立美術館に訪れたのは初めてです。いい意味で雰囲気の違う美術館でした。スタッフの方が気さくで地元に根差した施設なんだなあと感じます。今回の展覧会の企画のせいかもしれませんが親子連れが多く訪れていました。
テオ・ヤンセンはオランダのアーティスト。
なんじゃこりゃあという、動力なし、自然の力を使って動く作品を制作しています。作品はかなり大きくワシャワシャ歩くので以前から現物を見たいと思っていました。
これはテオ・ヤンセンの発明した彼の作品を構成する最も重要なパーツです。回転運動を振り子運動に変換するユニットです。2つの四角形と2つの三角形で構成されています。どこでも手に入るプラスチックのパイプを使って作られています。
この振り子の動きが、車輪で走るのではなく、歩行するという生物的な動きを実現した秘密です。
こうして作った作品は単なる機械ではなく、なんと設定がありまして、「ストランドビースト」という生物だそうです。
それぞれの個体には、難しそうな学名っぽい名前がつけられています。
アニマリス・リジデ・プロペランス
形、歩き方、機能によって名前は体系づけられていて、進化の歴史も、生物を研究するようにまとめられています。
そんな生物ならば動くだけではなく増殖するはずです。
ストランドビーストは、前述したパーツも含めて制作に必要な情報は世界中に公開されています。
このことで、テオ・ヤンセン以外の人でも作りたい人はストランドビーストを作ることができる。実際に世界各地で新しい新種のストランドビーストが誕生し数は増えているそうです。
会場には触って動かせる展示品も置いてありました。
なかなか重いのですが、子供でも動かせるくらい駆動系の動きは良いです。
そして、デモンストレーションも行われていました。
アニマリス・プラウデンス・ヴェーラ
これは手前に向かってワシャワシャ歩きます。
屋内で風力は使えない中、どうやって動くのか?
たくさん取り付けられているペットボトルの中に圧縮した空気が蓄えてあり、それを動力として動くことができます。
圧縮した空気を入れるタンクは飲料水のペットボトル。炭酸水を入れるものは10気圧は入るそうです。弁のような部品があり、実際には屋外で風を受けて空気をためる仕組みです。
さすがにペットボトルへ空気を蓄えたり、解放して歩いたり、という動作は人の手が必要ですが、それでも電気やガソリンなど使わないところは、完成度が高いと言って良いでしょう。
作品はすべてテオ・ヤンセンの手作り。今ではスタッフもいるそうですが、材料の運搬程度を手伝うくらいで、部品の製造から組み立てまですべて自身で行うそうです。
完成したストランドビーストはオランダのスフェべニンゲンという海辺の砂浜で動かします。長く平たんで一定の風が吹き続ける場所です。時には風が強く暴走することもあるようですが、大人が巨大なおもちゃで遊んでいるようでもあり、楽しそうです。
テオ・ヤンセンはアーティストというより、技術者、発明家というべき人で、途中で画家に転身しまきた。テクノロジーを作品に取り入れるのはそのような生い立ちからです。
ストランドビーストを見ていると自分も作ってみたくなります。プラモデルを作って喜んでいた子供の頃の記憶が蘇ってきます。この作品の魅力は作る面白さが見えるところです。
アートなどというと環境問題や、生物の有り様についての考察など、深いテーマを掘り起こしてしまいがちですが、そういうことは置いておいて、アートは楽しい、作ることは楽しい、それを感じるのがもっとも大切なことと思った展覧会でした。
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