年末恒例企画、お蔵入りコラムのお蔵出し。今年見に行ったのにコラムに載せなかった展覧会をまとめて紹介する企画です。今年で4回目。順調に(?)回を重ねています。

 

没原稿はなかなか減らないので、書くのに困らない。没にしたら筆が進むというこの矛盾。それでは軽快に始めましょう。

 

 

  特別展「やまと絵 ー受け継がれる王朝の美ー」 東京国立博物館 平成館

 

 

私は「やまと絵」が苦手です。日本画というと、浮世絵、狩野派、琳派、が思い浮かびます。この展覧会は、国宝、重文ばかりですので苦手が克服できるのでは、と期待して行きました。

 

そもそも「やまと絵」とは何ぞや? 

 

平安時代は、中国の絵画に対して日本の題材を描いたものをやまと絵と言いました。絵画の技法は中国からの輸入品ですから、描き方は中国式で日本の景色などを描いた。その後、日本画独自の表現が生まれてくると、日本の表現によって描いた絵画をやまと絵と呼ぶようになります。要は中国の絵とは違うものがやまと絵だった。

 

確かに良かったです。しかし、やはり、つかみきれない感じは否めませんでした。

 

やはり屏風絵は苦手。

 

絵巻物はどれも素晴らしいけれども、名場面だけ見るのではなく、ひと通り読まないと全貌が掴めない。全部展示しているものもありましたが客が多くて落ち着いて見れず、まだコラムを書くまでは足りない感じ。

 

66  地獄草紙

72  餓鬼草紙

62  信貴山縁起絵巻 飛倉巻

63  伴大納言絵巻  巻上

79  鳥獣戯画 甲巻

 

個々にはいいと思っても「やまと絵」ってどう?

と聞かれると、うーんというままでした。

 

最後に一言だけ、

 

「和漢朗詠集」は絵ではないですよ。

 

 

  ルーブル美術館展 愛を描く 国立新美術館

とても良い企画展でした。ただコラムが何だかチラシの単なる要約みたいになってしまい原稿に違和感があったので、没にしました。 

 

 

1  フランソワ・ブーシェ <アモルの標的>
ポスターに使われた一点。大きいです。ポスターは上の部分をトリミングしているので、実物は縦に倍の大きさです。全体では6人のアモルが飛び交っています。
 
よく広告の世界で子供と動物のCMは万人に受けると言われるように、赤ん坊の姿をしたアモルは無敵です。ただアモルは一人のはずなのに何故たくさんいるのかよくわかりません。
 
たくさん飛んでるのはプット、とかプッティとか言う天使の場合もあるのですが、ハートの的を矢で射ているのだから、アモルでしょう。
 
ギリシャ神話の中で、アモルが幼い頃に、ハートを射る練習をしていましたなんて話しは聞いたことがありません。
 
そんなことより可愛いからたくさん描いてしまえということで、時代と共にアモルは世界中で描かれる人気キャラクターとなりました。

 

 

67 フランソワ・ジェラール 
<アモルとプシュケ> または <アモルの最初のキスを受けるプシュケ>

 

 

大理石のようなピカピカの肌の質感が見事です。

 

でも何より、見えないアモルを感じているプシュケの表情が肝です。

 

計算された構図が見る人の視線をプシュケの瞳に吸い寄せています。

 

間違いのない名画です。

 

 

  ワールドクラスルーム  森美術館

 

 

書く気満々でした。

 

実は今年、森美術館のメンバーになり何回でも無料で入場できるようになったので腰を落ち着けて取り込もうと考えていたのですが、腰を落ち着け過ぎました。残念!

 

好きな作品をいくつか貼っておきます。

将来執筆する時の宿題として。

 

 

アイ・ウェイ・ウェイ コカ・コーラの壺

 

 

米田知子

ル・コルビュジエの眼鏡 ー「近代住居」の講演原稿を見る(「見るものと見えないもののあいだ」シリーズより)

 

 

杉本博司 Mathematical Model 022 

 

 

宮島達夫 Innumerably Life / Buddha 

 

 

 

  買上展  東京藝術大学大学美術館

 

 

東京藝術大学美術館が買い上げた作品を展示する企画展。中身が濃過ぎて、執筆をギブアップしたというが正直なところです。

 

こういう時は好きな作品を何点か選び、あとはサラッと書けば良いのですが、選べなかった。

 

しかし今年も終わりなので、2点だけ選んで終わります。

 

銅製群兎置物 石田英一

 

銅板一枚から打ち出したとは思えない3羽の兎。圧倒的な超絶技巧。

 

 

大西博 LA TRUITE(鱒)

 

女性の肌、横たわるソファにかかる白い布。

全てを覆い尽くす奇妙な青がこの作品の全て。

 

 

  さばかれえぬ私へ  東京都現代美術館

 

 

良い展覧会でしたが難しい展覧会でもありました。掘り下げきれなかったのが納得がいかなくて没となりました。

 

 

竹内公太 地面のためいき

 

竹内公太 サイトマーキング(ブロッサー)

 

第二次世界大戦において日本軍がアメリカ本土攻撃に使用した「風船爆弾」をリサーチし、それをいくつものアート作品にしたものです。1点目の写真は風船爆弾と同じサイズの気球の作品。2点目は風船爆弾が落下した場所を撮影した作品。

 

とても面白い内容だったのですがアート作品としてどう考えるかという部分が掘り下げきれませんでした。

 

 

志賀江里子 あの夜のつながるところ

 

 

東日本大震災をテーマにすえた作品です。震災後から東北に入りこのテーマで制作するアーティストはほかにもいますが、志賀江里子は、より被災した方々に近い目線で制作しているようです。

 

当時の出来事に加えてその土地に伝わるモチーフを多用するインスタレーションを見ていると自分体験の浅さを感じて、筆が止まってしまいまいした。

 

それは作者の狙いだったのかもしれません。

 

 

  Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎  東京オペラシティアートギャラリー

 

 

最後はこちら。もう終わってしまった展覧会ですので本音を言うと、良くなかった。

 

 

 

 

感じところもありましたが、わかりにくかった印象です。こういう仕掛けの多い参加型のインスタレーションは丁寧な見せ方をした方がよいと思います。見る側のレベルが低いと言われればそれまでですが。或いはコロナで十分な準備ができなかったのかもしれません。

 

しかし、他の作品も観てみたいアーティストだと思いました。

 

 

   

 

 

さて、これで アートコラム Conceptual Cafe

2023年の蔵出し終了です! 

今回は6件でした。昨年は8件でしたから改善されたと言っておきましょう。

 

独りよがりで適当な「蔵出し」でしたが、全て片付くのは気持ちいいです。2024年は新たな気持ちで執筆したいと思います。

 

読んでくださった方、いいね!をくださった方、

本当にありがとうございました。

 

みなさま、良いお年をお迎えください。

 

 

 

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