歌麿と北斎 時代を作った浮世絵師

岡田美術館

2023年9月18日(月)



「歌麿と北斎」というタイトルですが、同時代の絵師や江戸時代以後の日本画家の作品も展示されていました。


最初のブロックは、この2人以外の美人画の展示から入ります。


9  上村松園  晴日 

10  鏑木清方  雪の日

いずれも美人画の名手です。北斎や歌麿の美人画に学んだことは疑いないので、関連性は高い。特に上村松園は理想とする品のある美しい女性像を描くために浮世絵を研究したと言われています。対して鏑木清方は子供の頃の記憶に残る江戸の風俗や同時代に生きる人を中心に描いていますから、リアルな記憶、体験に基づいた女性像です。傘をさしながら胸元に包みを持ちにくそうに抱えて持つ、ありそうな雪の日の一瞬を切り取って描いています。



12  喜多川歌麿 三美人図

私は浮世絵の美人画の中では歌麿が好きで最高峰だと思っています。女性の何気ない所作を捉えることに長けていて、上手いなあと感心します。

ここでは遊女が誰かへの手紙を書き終えて口に筆を加えて、クルクルと巻き紙を巻き取っているところに、後ろから声をかけてくる花魁の方を見上げる姿。からかっているのか、優しい言葉をかけているのか、飾らない雰囲気の美人画です。



17  葛飾北斎  夏の朝

立つ女の後ろ姿。手に持つ鏡に僅かに映る顔に視線が引っ張られます。どこまでも精緻に描かれた衣の模様。北斎の人物画、肉筆画は完璧に上手いと思うのですが、女性の姿が絵画的美しさを優先したポーズで、歌麿と比べると理想的過ぎるのが私にはぎこちなく感じます。

 


20  葛飾北斎 浪千鳥

21  鳥文斎栄之 春の戯れ

22  渓斎英泉 十二ヶ月風俗画帖

春画です。一室、春画のコーナーを設けてあるのはとても良いです。もちろん18禁です。江戸時代も現代人もやることは変わらないなあ、などと思いつつ、どの作品も丁寧で上質、刷りがとにかく綺麗。蕎麦一杯以下の値段で作られているものとは品質が違います。



26  喜多川歌麿 深川の雪

24  喜多川歌麿 品川の月(複製)

25  喜多川歌麿 吉原の花(複製)

歌麿の肉筆画では最大サイズの「雪月花」の三部作。うち2作品「品川の月」「吉原の花」はアメリカの美術館の所蔵です。ここでは原寸大の複製が展示してあり、3点合わせて見ることができます。


「深川の雪」は岡田美術館のいわゆる目玉作品で見たことがあると思っていたのですが、門外不出らしく勘違いだったようです。発見された頃はテレビ番組でもよく取り上げられたので錯覚したのかしら。冬の料理茶屋の情景が生き生きと描かれていて、当時の暮らしぶりがよくわかります。

 個人的には浮世絵の美人画は人数を増やすとまとまりがなくなり群像画に向いていないと感じるのですが、日本画とは元々そういうものなので、見方が違うのかもしれません。



31  葛飾北斎 富嶽三十六景 神奈川沖浪裏

北斎の代表作である富嶽三十六景も展示されていました。シリーズの代表作である「神奈川沖浪裏」「

凱風快晴」「山下白雨」が交代で展示されます。この日は「神奈川沖浪裏」でした。とても状態の良い浮世絵で、岡田美術館は状態の良いものにこだわって収集していることが伺えます。


36  葛飾北斎 雪中鴉図
北斎晩年、亡くなる2年前、弘化4年(1847年)の作品です。80代後半ですが、決して老いて枯れた感じではないです。カラスは水墨画ではよく取り上げられる動物です。墨の黒と相性がよいからでしょう。嘴を開き「カア」とひと鳴き、何かの啓示のようにも見えます。


三連休に訪れたにもかかわらず、ガラガラでした。9月とはいえ真夏の天気、本格シーズンはまだ先ということでしょう。建物の裏の庭も紅葉が多く、紅く染まればさぞかし見事な眺めなのは想像がつきます。その頃は、大混雑でこんなに静かにゆっくりとはできないでしょう。


混んでいる美術館は好きではないので、次回は冬にでも訪れたいと考えています。



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