ジャム・セッション 石橋財団コレクション×

山口晃

ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン

アーティゾン美術館

2023年9月10日(日)



恒例企画、ジャム・セッション。アーティゾン美術館のコレクションをネタに、アーティストに作品を制作してもらい、展覧会に仕立てるというもの。


今回は国内外で人気の画家、山口晃です。




実は未完成の展覧会では?という疑惑もありますが、仕掛けが満載、ここでしか体験できない作品が用意されています。


1  汝、経験に依りて過つ


この部屋が最初の展示作品です。写真を見ただけでは伝わりませんが、強烈です。


この展覧会のテーマである現場でしか感じることのできないもの、「サンサシオン」を違った形で表現しています。



展示ケース、壁面、椅子などの配置も手が込んでいて展示フロアそのものが、この展覧会のテーマを体感させるようになっています。



そして所々に漫画が展示してあります。



東京大学のPR誌に連載している「すずしろ日記」です。実は展示作品の重要な説明になっているので、要チェックです。


展覧会の主題は石橋財団コレクションの2人の画家、


・ポール・セザンヌ

・雪舟


の絵画に対する考察です。これまでのジャム・セッションのアーティストは、新作をメインにしていましたが、今回は考察がメインという感じです。


特にポール・セザンヌについての考察がとても面白い。創る方の見方は、やはり違いますね。アーティストの深い視点を知る機会は少ないので、勉強になりました。ネタバレになるので、あまり内容には触れません。



ポール・セザンヌ

帽子をかぶった自画像


とはいえ、この絵の注目は

point culminant (頂点)


point culminant (頂点)とは何ぞやと?

と言いますと最も近い点のことです。(詳しくは会場で。)


普段、消失点は意識しているのですが、なるほどと思いました。



ポール・セザンヌ

サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール


典型的なセザンヌ作品。山口晃はこちらを模写しています。


5  セザンヌへの小径(こみち)


模写だけではなく現地を訪れてもいます。


この山の地味にカラフルな色彩は、表現上の工夫ではなく、実際のサント・ヴィクトワール山の岩肌の色だそうです。


これに続く雪舟の絵画についても同様の話がありました。


実際に視た時に生じた感覚、現実の存在をどうやって絵に昇華するか、いずれの画家もそれを探究していました。



10  モスキートルーム


ただの白い部屋です。解説の漫画を読まなければ、意図は絶対わからない作品です。


私にもモスキートが見えました。



15  善光寺御開帳遠景圖


善光寺のご開帳を描いています。ご開帳とは、普段見ることができない有難い秘仏を見ることができるという行事です。


七年に一度、封印されていたものが開かれ、街が違う様相となります。それを、多視点、多視線で、建物の中まで描き、額縁まで解体、いくつもの手法を重ね合わせて表現していました。



さて、「サンサシオン」です。


さんさしおん



セザンヌは絵画を描く際に大切にしている感覚を

sensation  (サンサシオン)

と呼んでいました。一応フランス語のようです。具体的に何を意味するかは、解釈によります。

ものを見る時にその周辺(?)に生じる感覚のことで、見たまま描いただけの絵では表現しつくせないものであり、絵画の探究とはサンサシオンを如何に表現するかということだとセザンヌは考えていたようです。

この展覧会は一貫して、単なる見るだけの絵画鑑賞にならぬようになっています。


山口晃らしい緻密に描いた、古くて新しい不思議な日本の絵ももちろん展示されています。


日本橋南詰盛況乃圖


しかし今回は、趣向を変えた世界を楽しめます。



掘り尽くされてしまったかにも思われる絵画表現の中に、実はまだ失われていない感覚、「サンサシオン」を、あなたは感じることができるでしょうか。



 

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