2023イタリア・ボローニャ国際絵本原画展
板橋区立美術館
2023年8月9日(水)
いやー、暑いですね。暑くなると思い出すのが、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展。
毎年イタリア・ボローニャで開催される児童書向けのイラストレーション・コンクールの入選作の原画を展示する展覧会です。先日、美智子様が訪れて鑑賞したのがニュースになっていました。
この展覧会は何より原画が見れるのがいいです。絵本と原画では発色がまったく違うことが多く、最近はより発色の強い画材も増えていますから色を見ているだけでも楽しい。
世界中から応募があるので、国ごとの傾向、色彩感覚、人の描き方、描くモチーフ、なども見えてきます。表現メディアに制約がないので、デジタルメディアなどの活用の進化も見て取れます。
応募作品は5点1組。完成している絵本の原画なら全点揃えられませんから、これだけで良し悪しを判断するのは難しいですが、それでもある程度は魅力ある作品を選ぶことはできるでしょう。一部の作品は絵本も置いてありますので、一粒で二度と美味しい展覧会です。
気になった作品をいくつか。備忘録です。
12 チェン・ウェイシュエン(台湾)
くだものパラダイス
くだもので何するの?というアイデアで創作した絵本です。シンプルな組み立てがいかにも絵本っぽい。
41 アテナ・マレツェ(ラトヴィア)
ぬすまれたねむり
デジタルメディアを活用している作品が増える傾向にある中、フェルトペンだけで描いています。物語は家族のお家でのちょっとした事件です。一発勝負で描いているはずですが、パパ、ママ、娘、ペットたち、室内の様子を多彩な色彩と描きこんでいます。絵本では手描きの生々しさはあまりわかりません。
48 マリアンナ・オクレイヤク(ポーランド)
暗闇よ こんにちは
その国イメージとかけ離れた作品があると驚きます。カラスが太陽を食べてしまい夜になってしまった世界の物語。大胆にデフォルメされたシンプルなキャラクターたちが力強い絵です。ヨーロッパの作品は緻密な描写が多く、北欧、東欧は澱んだ暗さをがある印象なのですが、色彩も派手めです。その国のカルチャーより、作家の個性が優ることはよくあることです。
55 さぶさちえ(日本)
いつもとちがった日
切り絵作品。黒い紙を切っただけで背景は白地のままのモノクロームの絵画。切り絵は日本だけのものではありませんが、その紋様のような装飾と平面性に日本らしさが見てとれます。世界で勝負するために、作り手が狙ってそうすることもあれば、表現を推し進めた結果でそうなることもあります。
67 ユリヤ・ツヴェリチナ(ウクライナ)
戦争日記
まさに、今戦場となっている母国での生活を描いた作品。政治的PRというより、厳しいと戦争という現実、悲劇、を生活者の目線で捉えた作品です。キーウ、マリアポリ、地下シェルター、映像でも見た数々の風景が描かれています。楽しいもの、キレイなものばかりを扱うのが絵本ではありません。
この展覧会はお盆休み、8月13日(日)までです。板橋区立美術館は三田線の終点、西高島平駅から徒歩14分。足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
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