ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台
東京都現代美術館
2023年2月17日(日)
初めに言うと、失敗しました。
こういう内容と知っていれば時間を作り見に来たのですが、一応覗いてみるかという気持ちで最終日の夕方に訪れたため時間が全然足りませんでした。
とても後悔してます。
ウェンデリン・ファン・オルデンボルフはオランダの現代アーティスト。
歴史や文化、社会課題をテーマにワークショップ、イベント、映像、インスタレーションによる作品を作っています。
展示されていたのは、6作品。
1 マウリッツ・スクリプト Maurits Script
2 偽りなき響き No False Echoes
3 ふたつの石 Two Stones
4 ヒア Hier.
5 オブサダ obsada
6 彼女たちの of girls
7 脚注:オブサダ Footnotes to:obsada
8 脚注:彼女たちの Footnotes to:of girls
珍しい展覧会でした。観ている人の熱気がすごい。どれも30分近い映像作品なのに終わるまで動く気配がない。
女性が7割くらい。今日だけだったのでしょうか。クリスチャン・ディオールの展覧会とセットで観に来ていたのかもしれません。
全体としてインスタレーション的空間設計になっていましたが、これだけ混んでいると、見る側の見やすさも考えてシネコン形式で上映時間割を明示した方が親切だったかもしれません。
全体を語るには端折って見過ぎたので、ひと通り観ることのできた「彼女たちの of girls 」を取り上げます。
これは、ウェンデリン・ファン・オルデンボルフがこの展覧会のために制作した新作で、日本をテーマにしています。
同時代を生きた2人の対照的な日本人女性小説家
- 林芙美子
- 宮本百合子
の作品を参加者(アーティスト、文学の研究者、キュレーター、学芸員、俳優など。一般人ではないです。)が朗読しながら、色々な角度で、物語や作者の内面に切り込んでいきます。
NHK Eテレ「100分de名著」をアート作品にしたものと考えるとイメージしやすいでしょう。
林芙美子は貧しい家庭に生まれて、日本各地を転々としながら文才で成り上がった作家です。
宮本百合子は名家の生まれで裕福な家庭に育ち優れた教育を受け、若い頃から才能を発揮しますが、共産主義者と結婚し、国家と戦いながら己を貫いて執筆活動を続けました。
面白かったのは外国人の参加者を交え、英訳本と日本語の原文を交互に朗読し、英訳によって失われたニュアンスや、逆に再定義され直した文章を掘り下げていくことで、作者や登場人物の内面、価値観を掘り下げていく討論でした。
鋭い感性、豊かな見識、深い考察と三拍子揃った密度の濃いやりとりを封じ込めた知的かつ文学的なアート作品で、他の作品も観たかったです。
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