令和四年 第58回京都非公開文化財 特別公開

知恩院 三門 <東山区>

 ・三門<国宝>

 ・宝冠釈迦如来座像・善財童子・須達長者・十六羅漢像<重文>

2022年11月6日(土)


 

昨年の秋、目的地も決めずにふらりと京都に訪れた。こういうことをしたのは初めてだ。


大阪方面に行った帰りに阪急電鉄京都線で京都に入った。京都河原町駅の入り組んだ地下から地上に出る。鴨川が目に入った瞬間、清水寺を目指すことに決めた。

 

道行く人は多い。外国人も見かける。着物の女性も多い。マスクは着けているものの、観光都市の賑わいを取り戻している。清水寺への上り坂に入ると修学旅行の団体に何度も出くわした。

 

今年の紅葉は美しくないと聞いていたが、清水の舞台から眺める黄、橙、緑の葉は目に沁みた。テレワークでパソコンの画面ばかり見ている生活に精神が想像以上にささくれ立っていたようだ。

 

清水寺を後に産寧坂を下る。京セラ美術館にでも行こうか。そんなことを考えながら人の流れに任せて円山公園をぬけ、知恩院の門をくぐる。開けた視野の右手に突然飛び込んで来たのが巨大な三門。

 

浄土宗総本山 知恩院。

 

昔来たことはあるが、遠い記憶と現実の存在のギャップに足が止まった。大きい。こんな大きかっただろうか。


門のそばに看板がある。「三門 特別公開 拝観料 1000円」。1000円、結構高いな。一瞬そう思った。しかし特別公開は京都でしか見ることができない。思い付きで訪れているのなら考えていなかった場所を観るのが筋だろう。逡巡しながらも入ることに決めた。


受付で千円札を渡し、備え付けのポリ袋にスニーカーを入れて、急な傾斜の階段を登る。登ってみるとかなり高い。欄干の向こうに京都の街を一望できる。ここからの撮影は禁止されているので街の眺望の写真がないのはご容赦願いたい。


中に入ると広さはテニスコート一面分ほどの一部屋の空間だ。薄暗い。照明は抑えめでよく見えないが壁際に多数の仏像が並んでいる。


どこからか係の方の喋る説明が聞こえてくる。

この三門は400年前建造の木像建築、三門としては日本最大で国宝に指定されている。普段は非公開。中の装飾は塗り替えておらず掃除もしていない。つまり当時のまま現在に至る。


仏像は中央に宝冠釈迦如来坐像。その名の通り頭に宝冠を被り背中に大きい光背をつけている。一般的に宝冠は菩薩像が被るものなので如来が宝冠を被るのは珍しい。左右には十六羅漢が8体ずつ。右から三番目の羅漢は釈迦の子供である羅睺羅(らごら)。この名前には邪魔ものという意味があるという。釈迦が出家を決意した時に生まれたことから出家の障害となる存在としてこう名づけられたとも言われている。


だんだんと暗がりに目が慣れてくると、中央の釈迦如来より左右の羅漢の衣服の豪華絢爛さに目が奪われる。上半身は埃で黒ずんでいるが、下半身の一部はよく見える。色彩が豊富で金も贅沢に使われてもちろん全て模様が違う。


天井は梁によって5つに分かれていて、たくさんの絵が描かれている。

  • 中央が龍
  • 左右が天女、迦陵頻伽
  • 外側が楽器 琴、太鼓、

壁にも一面に龍と波の模様。柱には龍の頭部と波があしらわれている。全面装飾に埋め尽くされた浄土の世界。


色彩ははっきりと残っているので埃を落とすだけで、完成当時の派手な空間が蘇るだろう。全体の姿をイメージすると過度なまでの装飾美に圧倒される。完成させるまでに大変な財力と労力を注ぎこんでいることは想像に難くない。この中身を丸ごと持ち出して東京の国立博物館で展覧会を開けたなら、大盛況は間違いない。


よく見ると壁や柱の所々に名前が書き込まれている。どう見ても装飾の一部ではない。落書きだ。400年の間に不届な輩が書き込んだらしい。簡単に忍びこめる場所ではないから、内部か関係者の仕業かもしれない。


見ていて飽きが来ないのと、とても落ち着く空間なので小一時間くらい居たろうか。係の方の説明も5〜6回は聞いた気がする。これで1000円なら全然安い。

 

 

三門を出た後、立派な石畳の階段を登り国宝御影堂にも寄った。


浄土宗の開祖の法然上人坐像を祀っている。380年前、徳川家光の時代に建造。



こちらは2011年「元祖法然上人の800年大遠忌」から平成の大修理が行われ、坐像を祀る内陣が黄金に輝いていた。


400年前から現代、数百年の時を軽々と跳び越える京都の魅力をあらためて体感したふらり旅となった。





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