瀬戸内国際芸術祭2022 秋

粟島

2022年10月9日(日)


 

3日間で瀬戸内国際芸術祭、四島のうち、本島、高見島と順調に周り、残るはあと二島。

 

次は 粟島(あわしま)です。

 

高見島から粟島へは、直行することができます。

 

粟島の作品ですが、私なりに3つに分けて紹介します。

 

 

 

  • 日比野克彦のプロジェクト
  • 粟島芸術家村
  • 瀬戸内国際芸術祭参加アーティスト

 

 

 

  日比野克彦のプロジェクト

 

この島には現代アーティストにして、今年の4月には東京芸術大学の学長に就任した日比野克彦のプロジェクトがそこかしこにあります。

 

私は、ワークショップやプロジェクトはやるものであって見るものではないという考えです。(およそやるのは面白そうですが、見るのが面倒くさいものが多い。)とはいえ、展示されていますから、そうもいきません。

 

 種は船  TARA JAMBIO アートプロジェクト

 

日比野克彦が数々のアートプロジェクトを経て作り上げたアート作品でもある船「TANe FUNe」に乗り、瀬戸内海のあちこちでサルベージをしてアートな宝物を見つけようという、少し冒険的要素のあるプロジェクトです。

 

船長小屋・乗船場所

 

本日は船はお休みで、乗船はおろか見ることもできませんでしたが、乗船場所に採取した品々が展示されています。

 

船長小屋・展示場所

 

島内の別の場所にも展示場所があります。博物館の研究室のように色や形状により分類整理されています。ここには顕微鏡もあり、肉眼では見ることできないものも調べることができます。

 

ちなみに「TARA JAMBIO」とは

 

・TARA(TARA Ocean財団)

海洋環境の調査と保護を目的に活動。

 

・JAMBIO(マリンバイオ共同推進機構)

日本の海洋生物学の研究、国際連携などに貢献することを目的に活動。

 

この二つの団体が共同で日本沿岸のマイクロプラスチックの調査を行なっています。

このアートプロジェクトはこの座組みを踏襲する形で考えられています。

 

そしてTARAは粟島芸術家村に出展しています。

 

 

 瀬戸内海底探査船美術館プロジェクト

上記のプロジェクトの延長線にあるプロジェクトです。

 

ソコソコ想像所

 

瀬戸内海で採取した品々を、観察、スケッチし、想像したことを文章して書き留めるという施設です。海底から採取した木片、石、何らかの日用品のカケラ、などはあらかじめセットされています。

 

たとえ何の変哲もない小石でもじっと見てスケッチすると見えなかったものが見えてきます。細かい模様、色、形、キズ、、。その時、人は誰でも自然にアーティストの目を持ちます。

 

走り始めれば誰でもランナーであるように、真剣に何か見る人は誰でもアーティストです。見ることで心が動いた時、アートは生まれるのです。そのような体験をさせるのが狙いです。


やってみたい気持ちもありますが、時間に追われる旅なのでそうもいきません。私にはこのコラムを書くというプロジェクトもありますし。



Re-ing A

 

海中から採取したレンガで制作した作品です。粟島の港と反対のエリア、西浜の海上に展示されています。結構浜辺から離れていて詳しい姿はよくわかりません。象のようですね。海にいる象だから海象(セイウチ)とか。どちらにしても絶滅が危惧される生き物です。


タイトルの「 Re-ing A 」は再生して生まれる何かという意味でしょうから、このプロジェクトの目指すものに、生物を守り育てることが含まれていることを表現していると思います。

 

 

   粟島芸術家村

 

粟島芸術家村とは、三豊市が廃校になった中学校を活用してアーティスト・イン・レジデンス事業を2010年から行っている場所です。島民の方々のアート制作の活動の拠点でもあります。

 

 

これまでに滞在したアーティストが制作した作品も展示されています。今年の作品ではありませんが、芸術祭の期間中公開されているこの作品、

 

言葉としての洞窟壁画と、鯨が酸素に生まれ変わる物語

大小島真木、マユール・ワイェダ

 

 

 

はとても良かったです。

 

写真がうまく撮れていないので良さが全く伝わりません。(言い訳をしますと、iPhone の夜間撮影の自動補正が災いしました。)

 

廃屋の木材や新聞紙などで部屋の中を土のように塗り固めて洞窟のような空間を作り、壁に壁画、中心に鯨の骨を浮かべた作品です。鯨は大小島真木、洞窟と壁画はマユール・ワイエダが制作したコラボ作品です。

 

大小島真木は白い鯨の遺体に海の上で出会った経験から鯨の作品を作るようになったそうです。鳥や魚が群がり食い尽くす姿に生命の繋がりを見出して、鯨をモチーフに表現しています。

 

マユール・ワイエダはインドのワルリー族の伝統である壁画の技法、絵文字でこの壁画を描いています。川が流れ、森が育ち、動物か溢れ、人が狩をし、田畑ができて、作物を収穫する。太古から続く生命の繋がりを絵巻物のように横に広がる360度の絵画に仕立てています。


 

船出の誇りとはなむけの島

善通寺第一高校デザイン科

 

これも良かったです。制作方法が企画から入っていて今っぽい。飾り結びの「総角(あげむき)結び」を使い、船にゆかりの深い粟島を表現した作品です。床の船のスクリューのような形は粟島の形でもあります。空にも見える網のようなオブジェも小さな総角結びを繋いでできています。とても洗練されたキレイなインスタレーションです。

 

TARA


TARAとは科学探査船「タラ号」。世界中を航海し、気候変動や海洋汚染の、生態系への影響を調査し共有する活動しています。乗組員には船員、科学者だけでなくアーティストもいます。展示室には活動報告だけでなくアート作品も展示されています。

 

粟島芸術家村は、他にも展示物があるので見る時は時間配分を気をつけた方が良いです。

 


  瀬戸内国際芸術祭参加アーティスト

 

粟島芸術家村の外にある作品をまとめました。

 

エステル・ストッカー

思考の輪郭

 

 

大地の芸術祭の松代城で見たエステル・ストッカーの作品がこの島にもありました。あの時は完全な格子模様の空間でしたが、こちらは折れ曲がっている部分があります。これは波形のようです。刺激のない場所では真っ直ぐな水平線と垂直線のグリッドが、この島の刺激を受けてオシロスコープのように反応してこの形になっているのでしょう。

 

視覚的なトリック、遊びも入っていて、波形のような山型は実際に突き出しているので蹴飛ばさないようスタッフの方が度々声を掛けていました。

 

 

 過ぎ去った子供達の歌

 ムニール・ファトゥミ

 

 

小学校が丸ごと作品です。学校にあったものを使って作っています。タイトルの通りの作品で誰もいない校舎なのですが、風化しない不思議な空間です。当時の子どもたちの写真や記録を使っていないことが、逆に過去を感じさせず、時を止めることに成功しているのだと思います。

 

 

アデル・アブデスメッド

「い・ま・こ・こ」

 

映像作品です。「え?」って思いました。これは見た方がいいので説明抜きです。

 

 

マッシモ・バルトリーニ

ステイルライフ

 

現代アートの野外作品はどこまでが作品か、よく分からないことがありますが、これもそうでした。

ステイルライフ(静物)といえば室内画。静物である花瓶は屋外に置くのは西洋画の定石に反することですが、反対の状況に置かれたことにより花瓶の内と外も反転するのではないか?という問いかけでもあります。



粟島はこれで終了です。何だか理屈っぽいものが多かったもします。



帰りの船は粟島から須田港へ、須田から歩いて詫間駅へ、詫間駅から予讃線で丸亀駅へ。

 

幸い午後は雨は降りませんでした。残すは、伊吹島。天気が良いことを祈ります。

 

 

 

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