日中国交正常化50周年記念展Part II

〜北京国際美術ビエンナーレより〜 

「アートで見る中国のいま」

日中友好会館美術館

2022年6月25日(土)


 

飯田橋にある日中友好会館、この中にある美術館で北京国際美術ビエンナーレの過去8回の出品作から選ばれた作品が展示されています。

 

中国のアート界は活況で今では世界第二位の市場ですが、日本で中国の現在のアーティストの作品を見る機会はまだまだ少ないです。私の印象はざっくり言うと


  • 技術的基礎のあるしっかりした作品を作る。
  • 作品が大きい。
  • 表現が強くインパクトがある。

中国は表現規制が厳しいと思っている方も多いでしょうが、中国共産党に楯突くような作品でなければ、日本人より過激な表現もあり侮れません。今回はそのような作品はありませんが、日本人のアーティストの作品が権力に楯突く作品が多い訳ではない実態を考えると、先鋭的な表現が何処で生まれるかはわかりません。掘り出し物もあるかもしれませんから、色眼鏡なしで見た方が良いです。
 
さて、それではどのような作品が展示されているかみてみましょう。

 

 

同じ空、同じ故郷

 

一見伝統的な山水画に見えますが、左半分には現代の建築物、右半分は昔の建築物が描かれています。画面を縦に分ける帯に中国語で「同じ空、同じ故郷」と書かれています。急激な現代化により、自然環境、名所旧跡、伝統文化などが失われていくという現実とそれでも変わらない中国の姿がここにあります。国土の大きさは懐の広さでもあるのだなと外国人の私は解釈しました。

 


故郷を見守る


新疆北部の農村の風景画です。木の板に天然漆を使って描いた変わらぬ故郷の姿です。中国の伝統技法の一つで白い雪の表現は砕いた卵の殻を用いています。日本では漆は絵画には向かないと言われますが、装飾性と写実性を併せ持ついい作品だと思います。

 

希望の土地


緑の木版画です。いい色です。意外に選ばない色です。中国北部、黒竜江省の畑が舞台。ナンバープレートの「哈市」はハルビンです。元々何もない大地を開拓し今日では一大穀倉地帯となりました。手の温もりのある彫刻刀の跡が、荒々しい畑仕事の風景、朴訥な表情の農民と雰囲気が合った作品です。

 

Fate of Another Lifetime


雲南省の少数民族が集まる舞踏集団「雲南印象集団」その公演にインスパイアされた作品です。リーダー、ヤン・リーピンの唯一無二のダンスは超絶的で来日公演も何度も行っています。絵の題材にはタイ族の女性の踊り。漢民族にはないエネルギーに満ちあふれています。50以上の少数民族がいる中国では、中国人が知らない中国を発見することもしばしばです。

 

One Herat


とても現代的で中国を感じません。上空から望遠で撮影したような人々の姿。バラバラに見える人々も天の下では繋がった一つの集まりというメッセージです。

現代アートあるあるなのですが、世界中で生活が現代化、都市化され、国際規模のビエンナーレが開催されるようになった結果、地域差が無くなってしまい、中国もアメリカもヨーロッパもみな同じような表現になる傾向があります。

 

夕暮れの異郷


中国の古書に描かれた街の絵を背景に現代の出稼ぎ労働者を描いています。今も昔も都市の豊かさを支えるのは地方出身の貧しい人々だという現実を作品にしています。この人々の姿は写真ではありません。全員描いています。中国の作品はさりげなく絵が抜群に上手いことがよくあります。

 

ザーシと彼の羊


木版画の黒と白のコントラストの強さを、野外の昼間の強い日差しと影にうまく合わせて、写実感があり光を感じさせる表現に結びつけています。ザーシと羊の姿はとても自然で、リアルな仕上がりになっています。

  

Mcdonald's - China


マクドナルドのロゴの形の陶磁器です。白地に青色の龍の紋様を描いています。中国の元の時代の青花という形式です。

海外の企業が国内に入り中国の文化が欧米化していく。いつの時代でもどこの国でも、現代化による文化の摩擦は生まれ、それをテーマに作品が生まれる。少し既視感のある表現です。


 

徽州遺産・5

 

中国の書画に用いられる紙を「画仙紙」といいます。その画仙紙を重ねて制作しています。ただ色をつけているだけではなく、退色させたり、傷をつけたりしています。

徽州は中国安徽省にある画仙紙発祥の地です。作者は徽州の出身で故郷が世界に誇る伝統的な事物を作品にしています。


毫香蜜韻

 

画面をいっぱいに埋めているのはお茶の葉、福建省泉州の特産品の白茶です。画面下、手前はガラスコップです。東洋(白茶)と西洋(コップ)の対比がテーマです。


「毫香蜜韻」とは白茶の特徴を表す言葉です。

  • 毫香 白茶の爽快な香り
  • 蜜韻 蜜のような甘い後味

コップにお茶が入っているのですから、2つの文化は融合し一つのものとなり世界に潤いをもたらすと解釈するのが健全でしょう。

 


今回はこの辺で。


振り返ってみると、現代と中国の文化との関係を背景にした作品を多く取り上げています。偏った視点だという気もしますが、止めるの難しい。真の意味でフェアな視点をもつのは不可能かもしれない。外国で興味が湧くのは、その国独自の文化なのは当然です。


一方で世界の最先端、人類共通のテーマ等は欧米発信からという時代でもないでしょう。


新たな才能がどこから生まれるかは未知ですから、今後も幅広くアンテナを広げて、視点を変えながらアートを紹介していきます。


 

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