名和晃平 「TORNSCAPE」
SCAI THE BATHHOUSE
2021年12月4日(土)
元銭湯の展示ギャラリー SCAI THE BATHHOUSE で、名和晃平のアート作品の展示を観てきました。
無料ですがコロナ下なので予約制。30分で5名程度の入場枠。とても落ち着いて鑑賞できました。
平面作品が6点、映像インスタレーションが1点という構成。メディアは違いますが同じコンセプトの作品です。
映像インスタレーションは、大型のスクリーン三面に映し出されるものです。正面がワイドな横長、左右が幅が少し短いコの字型に配置されています。
映し出される映像は白とグレーの世界。
雲のようで
ガスのようで
滲みのようで
細胞のようで
波のようで
時に赤く変化し、マグマのようでもあります。
「TORNSCAPE 」
プログラム:白木 良
サウンドスケープ:原 摩利彦
抽象的な模様というより何かの自然現象のようなディテールがあり、常に動き変化し続けるものです。
平面作品は何らかの絵の具を使って描いていますが、絵画というより平たい立体造形物というべきものです。
例えば大量のひじき(?)を光沢のある黒いインクを入れた大きなタッパーに放り込んで固めたようなもの、立体地図に何種類もの絵の具を流しつり垂らしたり乾かしたりして形作ったようなものなどです。
日本人の伝統的美意識の中に
素材のもつテクスチャーを愛でる
というのがあります。
日本刀、陶器などがその代表です。
純度の高い鉄を磨くことで現れる地肌や鏡のような輝き、流れる釉薬と燃え盛る炎の跡が残る土の質感。
その素材のもつテクスチャーを作為を排除して
取り出して封じ込める、
そのようなアプローチで制作している作品だと思います。
映像インスタレーションは
気象や物理データを元にしたデジタルシミュレーションでパラメータを調整することで創り出しています。同じパターンが繰り返されることはないそうです。
寄せては返す波や流れる雲に意味はありませんが
ずっと眺めていても飽きがこないものです。
意味の持たないものも見ていれば何らかの感情の起伏が生じているのは確かで、その揺らぎを解釈などせずに己を任せるのも良いものです。
それは人間が言葉をもつ以前から持っている心の深層の活動で、アートはその部分の働き探り当てることができます。
アートを観ることは自分の心の深いところへ旅する行為でもあるのです。