まるごと馬場のぼる展
描いた つくった 楽しんだ ニャゴ!
練馬区立美術館
2021年8月11日(水)
「11ぴきのねこ」の絵本が有名な馬場のぼるは今年で没後20年、練馬区民だったので(在住50年)この展覧会が企画されたそうです。今回の展覧会では、絵本の出版社のこぐま社のカラーの出品作が多いので、手塚治虫と同世代の漫画家だったことを忘れそうになりますが、それくらいこの絵本は大ヒットシリーズで累計400万部以上発行されています。
何十年かぶりに「11匹のねこ」を読みましたがストーリーのぶっ飛び方がスゴイなと思いました。子供向けの絵本なのに、ねこたちが全く善人(善猫?)じゃない。行動原理が本能、欲望のままで反省しているのかよくわからない。(そもそもねこは反省しなそうだし。)学びがあるのかよくわからない強引なオチ、でも笑ってしまうユーモラスさ。
あまり偉くない市井の人々の日常を笑いにする落語のような物語とも言えます。登場人物が「人間」から「ねこ」になってもう一捻り加えつつ、「ねこ」ならではの愛されポイントが加味されて許されてしまう。もちろん馬場のぼるの生み出したキャラクターの魅力がその中核にあります。ねこも他のキャラクターも絵画ではなく漫画、つまり記号化された絵でわかりすく親しみやすい。一作目から完成されていて、シリーズとしてブレがないので練りに練って作り上げた絵本だと想像できます。
「11匹のねこ」の他にもたくさんの作品が展示されています。画風が確立してからは品質が安定しているのでどれも素敵ですが私のオススメは「アリババと40人の盗賊」「アラジンと魔法のランプ」です。これは絵本の原画でとても綺麗で上手だなあと惚れ惚れします。ちなみに「11匹のねこ」はリトグラフ印刷で原画が存在しないので、こぐま社所有の色校正を額装して展示しています。
漫画家の絵本の会の仲間たちとの交流や、旅の景色などの絵もあり、生涯好きな絵を楽しく描いて生きた人だったということが、よくわかります。
本当に万人にオススメの展覧会です。都内在住の方は是非お越しくださいませ。