隈研吾展
新しい公共性をつくるためのネコの5原則
東京国立近代美術館
2021年6月26日(土)
新しい公共性をつくるためのネコの5原則、
略して「ネコの5原則」です。
5原則とは人間のルールに縛られないネコ目線に立つと見えてくるもので「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」の5つです。隈研吾の建築をこの5つに分けて展示しています。建築家は難しい専門用語を並べて説明する癖がありますが、ネコ目線なので多少ハードルは下がっているかと思います。
まず出発点は「建築物って四角いハコばかりだよね、息苦しくない?」というところから始まります。隈研吾は5原則に基づいてこれを打破した作品を創り出してきたのです。
・「孔」四角いハコにあなを開ける。
建築というハコにあなを開ければ確かに開放的になり居心地が良くなると思いますが、あなの開け方は様々です。大型の建築物は内と外ばかりでなく周りの環境を巨大な壁となって分け隔ててしまいます。それなら、建築にあなを開け反対側と出入りできるにようにし対岸まで見えるように作ったのがスコットランドの「「V&Aダンディー」(V&A Dundee)。
河辺の美術館です。米TIME誌にて「2019年世界で訪れるべき最も素晴らしい場所100選」に入っており、私でも知っていました。周囲の景観も含めて映えるので隈研吾の作品の中では勝っている建築のような気もします。
・「粒子」粒子を集めて建築する。
粒子とは必ずしも丸い粒を意味しません。実際の建築では60ミリの角材のことだったりします。隈研吾はの建築物も周りの環境も粒子の集まりと捉えてシームレスな公共空間を設計するそうですが、最新の代表例はこちらでしょうか。
費用の問題でボツになったザハ・ハディドの妄想的巨大オブジェ、石の塊とは対極にある、日本の全都道府県から木材を集めて組み上げた粒子の集合体です。全体のフォルムはオーソドックス。負けてますねー。実際に観に行くのは暫く先のことになるでしょうが、ケレン味が無い分、どんなイベントでも観客の一体感が醸成され盛り上がりそうです。そして舞台となる競技場で勝つのは建築ではなく競技者ということなのでしょう。
・「斜め」斜めのハコをつくる。
四角いハコは水平線と垂直線でできています。丸の内のオフィス街は四角いハコの集まりで、水平線と垂直線だけの人工的で無機的な空間。効率的ですが息が詰まるような窮屈な感じがします。斜めの線、面で構成した空間は遊びがあっていいのですよね。でも攻め過ぎると落ち着きがなくなりますね。根津美術館とか上品でいいです。あとはこちら。私はこのくらいが好みです。
周囲の建築(右側の建物)との調和を意識している分、垂直線は真っ直ぐですが水平線は変化があります。中に入ってみたいです。
・「やわらかさ」ハコをやわらかくする。
石や鉄で作られた建築は人にやさしくない、ましてやネコにはもっとやさしくない。ネコにとって肉球がツルツルすべるガラス、爪の立たない硬いコンクリートなどはストレスが溜まる環境でしょう。その点、古い日本家屋は木、土、和紙と人と接する部分には自然由来のやわらかい建材が使われいます。その古きよき伝統的な良さを活かした東京で観ることのできる最新の事例のひとつがこちら。
まだ降りたことがありません。(東京生まれの人間は地元の最新スポットに中々行かないんで。)オリンピックの前には行って確かめたいと思います。
・「時間」古いハコを活かす。
アートが時間を取り込んで、新しい作品を創り出そうとしたように建築でも時間を取り込むことはできないのか。古くなった建築は名所旧跡になるしかないのか?ネコはそんなこと考えそうもありませんが、その回答として古い建築やエリアでのプロジェクトも手がけています。北京の伝統的な住宅、四合院を活用した建築もその一つ。四棟の建物をロの字型に並べて中央を庭とし外側は壁とする構造の建築をリノベーション。前門の壁を内側の様子の見えるつくりにして、外側と完全に隔離していた住宅にあなを開けました。
北京 前門/隈研吾
正直この建築の時間の取り込み方がよくわからなかったのですが、これよりむしろ東京のJPタワーKITTE、GINZA KABUKIZAなどの方がピンと来るかと思います。
展示は建築模型とパネル以外にも、映像作品や先端技術を用いた体験展示もあります。
無料の第2会場では「東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則」というのもありますので、お見逃しなく。