生誕150年記念
モンドリアン展 純粋な絵画を求めて
SOMPO美術館
2021年6月5日(土)
オランダの画家モンドリアンは、抽象絵画の創始者で、水平線と垂直線の「コンポジション」が代表作といえますが、生涯を通して作品見ていくと最新の美術を学びながら実験を続け変化し続けた画家だということがわかります。
気にいった作品をとり上げながら、そのあたりを書いていきたいと思います。
10 「 ペイン河畔の枝を切り落とされた柳な木立」
モンドリアンは初めハーグ派という風景画を描いていた。そこから印象派の影響も受けつつ独特なこだわりで創作を進めていく。この時期、枝を切り落とされた木立のある風景を執拗に描いた。木立という現実に存在する垂直線に無意識に興味を持っていたようだ。この絵は木立の奥に川の水面が見え、少し爽やかさがある。
21 「 にわとりのいる農家の家」
印象派の描き方をした作品はこれが最後という。淡くピンク色に輝く空を逆光にした農家の手前に立ち並ぶ木々と、地面を覆う濃厚な草の緑がパレットナイフで素早く描かれている。地面には赤、白など絵の具をそのまま塗り付け描いた鶏、近くで見るとわかりにくいが離れて見ると鶏らしく見える。この後、色彩、色面の研究にテーマが移っていく。
34 「 砂丘 Ⅲ」
この時期、オランダカイウ(花)、灯台、教会などをモチーフに色彩実験を試みた作品を描いている。実物の色とはかけ離れた強い色彩の組み合わせが多い。「砂丘」という作品は「Ⅰ」〜「Ⅲ」まで3点あって同じ砂丘の景色を点描の手法でほぼ同じ筆致で色彩を変えて描いている。敢えて選べば「Ⅲ」がいい。
40 「 風景」
パリに移り住んでモンドリアンはキュビズムにハマる。これは分析的な手法で風景をタテ線ヨコ線に分解した上で、セザンヌ的な色彩配置を用いたような作品。アートが好きな方が見れば、キュビズムとセザンヌの合わせ技だ!と必ず言うと思う。
43 「色面の楕円のコンポジション2」
景色を元に描いたことが資料からわかっている作品。縦長の楕円の中にたくさんの黒い線で描かれた四角がピンク、オレンジ、水色で塗り分けられている。右側には看板の文字、アルファベットのU、Bが残っている。何も知らなければ模様にしか見えない。しかしキュビズム的分解から構成の段階に進み始めたことが伺え、このあたりから他者の追従ではないモンドリアン独自の造形が始まる。
46 「色面のコンポジション No.3」
3つの色を四角に切った色紙を置くようにいくつも配置し、線は一切ないシンプルな作品。3つの色は色彩の三原色にする構想だったが、新しい表現を受け入れる土壌が世間にはないとみたモンドリアンは受け入れやすい淡い色合いの三原色、茶、灰青、薄桃色、に変更したという。自らの造形理論が見えてきた頃の作品。
47 「 夕暮れの風車」
経済的にやりくりするために描いたという一点。
夕焼けを背に黒くそびえ立つ風車小屋が見上げるような角度でダイナミックに描かれている。ピンク色の夕焼け雲の描き方がパターン化した模様のようで抽象絵画的ニュアンスを感じられる。
51 「大きな赤の色面、黄、黒、灰、青色の
コンポジション」
1921年の作品。展覧会のポスターにもなっているこの作品はモンドリアンの代表作にして抽象絵画の到達点。この方向でこれ以上ふり切るのは不可能だろう。
画面を黒い線で区切り、原色で塗り分けた完全な平面絵画。実物の塗りは雑で筆の後が見えるし、塗りムラもある。黒い線もカンバスの端に届いておらず少し空きをとっていて、アナログ感があるのが意外。模倣して描くのは簡単でも作り出すのは困難な作品。
今回の企画展は展示数は少ないものの、時系列に初期の作品から並んでいて、モンドリアンの考え方の変遷がよくわかります。
アート初心者も入りやすくオススメでしたがチケット完売、コロナによる休館で予定通り終了となりました。仕方がありませんが勿体ないことです。